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第54号:会社に良い人材を集める条件と対策

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人材確保の条件

「シライ先生、どんなに私が仕事を獲ってきても、それを捌ける人間がいないのです。」セミナー終了後の個別面談での、サービス業を営むA社長のご発言です。社長自身、しっかりと営業活動に取り組み仕事を獲ってこられています。

 しかしいざ、その仕事を社員に任せようとすると、様々な「言い訳」にあい、思った通りのサービスが提供できないことが起きています。

 また、それであればと人材採用に力を入れているものの、反応がありません。時々応募に来る人があっても、社長の期待する人物ではないことばかりで、全く採用に結びついていない状態です。

 良い人材を確保するためには2つの条件があります。

 第1の条件は、賃金水準が高いことです。これは多くの経営者が内心分かっているけれども目をつぶっていることです。敢えて申し上げるまでもなく、多くの人々にとって働く理由の最も大きな理由は、経済的自立を手に入れるためです。

 大手企業がコストである人件費をしゃにむに引き上げている理由、それは優秀人材を確保するためです。様々な人材獲得策はあれども、何が本質的なことかと言えば、それは賃金水準です。大手企業はそれを十分理解しているからこそ、先行投資の意味で賃金水準を上げ続けています。優秀人材を獲得する絶対条件こそ、賃金水準です。

 第2の条件は、会社がこれからどうなっていくかが可視化されていることです。簡単に言えば、会社がどんな事業をやり、どんな水準を目指し、何を人材に求め、何を人材に差し出していくのかが可視化されている、ということです。

 これら2つの条件を揃えることが、成長を目指す事業経営者にとっての鬼門です。そしてこれが鬼門になるのは理由があります。それは、社長の「感覚」をそのまま人材(社員)に当てはめようとするからです。

 多くの社長、恐らくこのコラムをお読みの社長は皆、自ら道を切り開いていこうとされる能動者です。自身の理想と願望の実現に向けて、大きなリスクを背負いながら、理想を実現するために、犠牲を払うこともいとわず進んでいく方々です。皆さんがやっていることは、自らの力で自らのビジネスという居場所、すなわち環境を作っているということです。

 しかし、現実的にはそういう能動者の数は限られている、という事実を見る必要があります。能動者の反対は受動者です。彼らは自ら環境を作るのではなく、環境の中で生きていくことを望んでいます。もちろん能動と受動は二元論で語れるものではなく、ある事柄においては能動的な面が強く、別の事柄については受動的、というのが一般的でしょう。

 御幣を恐れずに言えば、社員は貴方が社会の中に創り出した「ビジネス」という環境の中において、その遂行に必要な細分化された業務などを「担う」存在です。「環境内の役割を担う」存在であり「環境を作る」存在ではないのです。

 事業家であるあなたにとっては、「報酬」は「投資」の先にあるというのが当然の姿として映っているはずです。しかし受動側からするとその理屈は通らないのです。何故なら受動側は環境の中で生きることを望むため、報酬や仕事という環境を先に求めるからです。

 労使関係には、根本的にこのような構造的すれ違いが働いているということを理解する必要があります。したがって優秀人材を確保するためには、「まず第1に他社よりも高い賃金水準を確保し、第2に他社よりも希望の持てる組織」という環境を用意しなければならないのです。

高賃金化の対策1:事業を高付加価値型に設計し直す

 それではどうすればよいのか?という話になります。第1条件の賃金水準は、業績や資金繰りで決まります。しかし、その業績を上げるためには人が必要になる・・・という論理展開をすると、残念ながら袋小路に入り込みます。人材は、賃金水準が高くなければ来ないからです。

 ここでまず目を向けなければならないことは、人材ではありません。「そもそも、事業が高付加価値型に設計されているか?」ということです。薄利商売ではなく、時間単価の大きいサービス、粗利率の大きいモノを生み出し、価格を下げずに売る仕組みがあるかどうか、ということです。

 もし薄利商売で利益を上げようとすると、受注数量を増やさなければならず、必然的に仕事量が増え、これを捌くために「人手」が必要になります。その「人手」が確保できない以上、この戦略も袋小路です。

 薄利商売から高粗利商売への転換・・・この実務は社長の仕事になります。「世の中に対して独自の価値を生み出し届ける」という活動は、まさにビジネスづくり(=環境づくり)そのものです。先ほど説明したように、人材確保が厳しい会社でそのビジネスづくりができるのは社長しかいません。

 社長と、一部の幹部社員の力で、どうにかして現状商売を少しでも利幅の取れる商売に設計し直すのです。利幅を取れれば仕事量や人手を増やさずとも粗利額を上げられます。粗利額を10%上げることができれば、営業利益も10%上がります。

高賃金化の対策2:組織化を進める

 事業の高付加価値化に向けて独自のウリモノを定義し、これに身体性を与え、受注していく導線は設計できた。A社長はここまでを成し遂げている状態です。

 しかし、設計だけできてもこれを具現化しなければビジネスになりません。現状、A社ではA社長と一部の幹部社員だけが、その高付加価値型の独自のウリモノを売り、サービス提供できる状態です。これを組織の力で回せるようにする必要があります。 

 ウリモノのコンセプトが良くても、サービス提供者の質が悪ければ金メッキが剥がれる如く見抜かれ、価値は上がりません。ここでA社は、これを解消するために従業員教育や人材採用でカバーしようとしています。

 しかしここが大きな違いになります。ここで人の能力に依存する限り、会社は前に進めません。理由は明快です。現時点では優秀人材を確保する高賃金という条件を満たしていないからです。ここで人材育成や採用を一生懸命やっても折角の努力が水の泡になってしまいます。

 この状態を打破する対策は、「組織作りを進める」ことです。「それはその通りだろう」という声が聞こえてきそうですが、ここでの重要なポイントは「組織作り」と「人作り」を明確に区別するということです。組織作りと人作りを混同しているケースは殊更に多いのが現実です。

 組織作りとは、「人の集合に方向性を与え、これを効果効率的に動かす仕組みを作る」ということです。一方の人作りとは、「仕組みを回せる能力、仕組みを作り変える能力、受動者から能動者への変革」を促進することです。

 そして重要なことは、組織作りが土台であり、人作りは土台の上に形成される、ということです。

 なぜなら、人作りは多分に人本人の現有能力や意欲、受動型か能動型か、という極めてパーソナルな変数の影響が大きいからです。賃金水準が整っていない現状で、そのようなパーソナルな変数に依拠した取り組みは非常に不安定になります。

 一方、組織作りは複数人の集合をどのように動かすかという「ルール・規律」の世界です。ルールや規律は、能力や意欲とは別概念です。国は法律を制定し、そのルールの中で個人が自由に生きています。学校にも校則があります。そのようなルールが「大人数」という集団に方向性と規律を与え、行動と成果を規定しています。

 つまり、「組織化によって”高付加価値型事業”を回していける仕組みを作り、その中で集団を動かすこと」、これが業績という成果を生み出し、利益と1人賃金を上げていく要諦です。

 組織化(ルール・規律づくり)とはより具体的には、「ベクトル・プログラム・ヒエラルキー」の3拍子を揃えることになります。

 ベクトル化とは組織全体を統率する方向付けです。組織がどの方向に進もうとしているかを可視化することです。

 プログラム化とは、業務のやり方や進め方を、高付加価値型事業を回せるものとして組み立て、固定することです。やるたびに変わる、やるやらないを個別判断するのではなく、価値提供にふさわしい“標準の型”を作り、それを共通言語にしていくことです。これは業務の環境を整えるということです。

 また、業務プログラムや職場ルールの遂行に対する評価や賃金の基準や出し方を決めることです。これは行動や成果に対する精神的経済的報酬を決める環境を整えるということです。

 ヒエラルキーとは、情報の流れを整えるということです。報連相、指示命令、意思決定とチェック体制、プログラムの更新体制を整えることです。言い換えれば、上司と部下、部門間同士の血流に関するルールを定めることです。

 これらベクトル・プログラム・ヒエラルキーの3拍子がしっかりと回り出すと、組織には「高付加価値型事業を回すための規律と習慣」が形成されます。これによって個人能力に依拠せずに成果を生み出すことが可能となる「環境」に組織が変化します。

まとめ:人材確保の条件と対策=高付加価値型事業設計→組織化→1人粗利増加→高賃金化

 これによって「仕組みで高付加価値事業が回り出す」状態までくると、はじめて優秀人材の獲得に向けた「高賃金化」を可能とする原資を生むことができます。ここで押さえるべきポイントは、これは「優秀人材の採用」だけに限った話ではないということです。

 組織を組織化することで、「既存社員の中から能力開花させる人、受動者から能動者へ変わっていく人」が生まれ始めるということです。この理由は、組織の環境が変わるからです。先ほどの説明を思い出してください。多くの人は環境を求めるのです。その環境が、自分により大きなプラスやメリットを与えてくれるであろうものに変化していれば、そこに自分を順応させていきます。

 また一方で、自ら離職していく人も現れ始めます。環境が変わる中で適応する人もいれば、適応せずに現状と同じ環境を求めて離職していく人もいます。

 組織化するということは、高付加価値型事業に向けて組織のベクトル・プログラム・ヒエラルキーを従前とは違うものとして固定することであり、これによって組織という環境を変えていくことに他なりません。そして環境が変わるからこそ、中にいる人も変わり、ひいては外から環境に見合った人材も集まるようになるのです。

①高付加価値型事業設計(人や投入資源を増やさず単位当たり粗利を最大化する独自価値設計)

②組織化(高付加価値事業を規律とルールによって回す)

③人作り(新たな組織環境に適応しようとする人材の能力と資質の開発)

③結果として1人粗利増加→利幅増加→増加利益を会社利益と社員賃金で按分し、高賃金化

 この手順をしっかりと踏むことができて、はじめて優秀人材を確保できるようになります。そして社内に優秀人材が生まれれば、今度は組織化、組織運営、そして育成までを社員の手で回すことも可能です。

 そういう状態にするためにも、まずは「高付加価値事業設計」そして「組織化」という根幹を、社長が主導となってやっていくのです。

 あなたの会社は、「仕組みで人を動かす設計」になっていますか?これからも「良い人が入ってくれればなんとかなる」という期待だけで、毎月を乗り切っていきますか?

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