第45号:高付加価値組織に変えていくシンプルな取り組み

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「シライ先生、業務基準書を使って業務の可視化に取り組んでみました。20枚集まりましたよ。しかしあれですね、何でこの仕事にこんなに時間がかかってるのだろう?・・・と気が付くことが沢山ありました」
製造業を営むA社長のご発言です。A社長は現在、人時付加価値を上げていく仕組み作りフェーズに入っています。業務基準書の作成に取り組んでいく中で、1カ月ぶりにお会いしたA社長の言葉です。
業務基準書は、業務の目的・基準・進め方が体系的にまとめられた書です。マニュアルと言い換えても良いでしょう。その目的は、A社の独自価値を作り上げるための、各業務のあるべき姿を決めることです。
1人粗利3千万円事業をつくるためには、「人時」という人の稼働時間にフォーカスする必要があります。時間当たりの利幅を最大化することはそのまま1人粗利の増加に繋がります。A社も勿論その理屈は分かっています。しかし実際にこれを可視化してみると、感覚と事実の間に大きな隔たりがあることに気が付きます。
会社が提供する独自価値を生み出すのは、日々行われる業務です。業務の1つ1つがすべて独自価値に繋がります。しかし往々にして、業務が業務単体で動いており、目指す独自価値の創造に繋がっていないことがあります。また、独自価値に繋がっていたとしても、その品質と時間粗利が安定していなければ、成果も安定せず脆い業務基盤となります。
担当社員が入れ替わったり、新人が入ってくるたびに業務レベルが上がり下がりするのであれば、独自価値もまた不安定になります。また、業務に明確な目的がなければ、独自価値との繋がりが不明瞭になり、現場では業務を単なる「作業」としてこなすことになります。
業務の目的が分からない(あるいは各人で認識が違う)、業務が生み出すべき成果基準が不明瞭、成果基準を生み出すプロセスが各人バラバラ・・・A社長は、同じ業務に従事する複数人にそれぞれ業務基準を作成させてみたところ、目的認識・成果基準・プロセスが異なっていることが可視化された、というわけです。
業務基準書は、これが組織で運用されることで「独自価値を際立たせる業務の型」を遂行していく役割を担います。しかし今回A社長の発言にあるように、業務基準書は「これを作る過程」においても組織を変えていくはたらきを持っています。
まず、社長が思っている以上に「業務の可視化に対して前向きな期待を持って取り組む社員は多い」という事実があります。特に、実力的に中間から下に位置する社員はこれを好意的に受け止める傾向にあります。
理由は単純です。「当事者」として当たっている業務における「成果を出せる方法」が分かるようになるからです。実際に業務記述書を作成して活用を始めると「こういうのがずっと欲しいと思っていた」という感想を述べる社員は一定数います。
A社長も、社員が協力してくれるかどうかの不安を口にしていました。しかし冒頭のセリフ通り、蓋を開けてみれば1か月の間で予想もしていなかった枚数の業務基準書が上がってきました。
もちろん、集まってきたのは「完成形としての業務基準書」ではなく、「各人の業務の現状」を記したものです。この後、それぞれの業務に統一の目的・基準・やり方を設定していき、業務基準書として完成させていくことになります。
この完成させていくプロセスにおいて、主体的な業務改善が進んでいくことになります。自分たちで現状を洗い出し、自分たちで業務を良い方向に変えていく・・・まさに多くの経営者が社員に望んでいる姿がそこにあります。
これを可能とするのは、「業務基準書」という明確な成果物があるからです。極めて単純な作業を除き、業務にはある程度の「時間の長さ」があり、多くの「思考」と「動作」と「ツール」が組み合わされて遂行されます。それらの手順や組み合わせのあり方は、文書などのカタチで可視化しなければ、記憶に留めておくことも出来なければ他者に伝えることもできません。
「業務基準書を作成すること」は、業務改善における一つの目標であり、業務改善の成果物です。業務を改善改良するということは、すなわち業務基準書を書き換え、これを運用することと言い換えて差し支えありません。
業務に様々なバラつきがあることが分かったA社長は、早速1つの業務について基準書の仕上げに取り組みます。あまりに業務時間にバラツキのある仕事の進め方を、管理職中心にあるべき姿へと検討させています。
もちろん、そこには洗い出しに参加した社員も参加しています。洗い出しを経験している彼らは、自分たちが「より良い成果を出せるやり方を出来るようになるのではないか?」という期待を持ってそのプロジェクトに参加しています。
このように、業務基準書はその作成過程において組織の態度を変えていくはたらきがあります。外部研修を受講させたり勉強させることも重要ですが、それが業務の中で実践として生かされなければ何の成果にも繋がりません。研修や勉強の成果は、業務基準書の中に落とし込まれてはじめて実行可能な形となります。
組織の考え方や行動を変えていくには、社員が当事者として関わっている「業務」ごとの「目的・成果基準・やり方」に目を向けさせることです。結局は目の前にある業務の1つ1つが、他社と自社を明確に区別する「独自価値」を強く・濃くしていくことに繋がっていきます。
「売上を上げること」に目を向けさせるのではなく、「商談業務」における「ヒアリング・提案・クロージング」のあり方に目を向けさせるのです。「不良率の低減」に目を向けさせるのではなく、「加工業務」における「道具・手順・動かし方」に目を向けさせるのです。
市場において、自社が他者と明確に違う存在になれるかどうかは、日々組織が動かす「業務」によって決まります。業務が独自価値創造という一点に向かって統一されていればいるほど、自社の独自価値は強く・太く・鋭く・濃くなり、市場における唯一無二の存在となっていきます。
あなたは、社員に業務の目的・基準・やり方を考えさせ、改良が自発的に進む組織を作っていますか?