第50号:福祉・教育・飲食・宿泊・・ハコモノサービスこそ、拠点拡大より単価に拘るべき理由

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「シライ先生、弊社の10年分の決算書です。」こう仰られた福祉事業を営むA社長は続けます。
「当社も昔は1事業所からスタートしました。少人数ながら事業も順調に行って、夢だった自社物件も手に入れました。この自社物件は、弊社サービスの特色を代弁するシンボルでもあります。これを契機に事業所数を増やしていったのですが・・・ご覧の通り、資金繰りは厳しい状態が続いています」
「原因は分かっています。施設管理者が部下を管理できない、不平不満がたまる、離職が増える。結果、私への相談も増え、毎日社員からの相談や雑務に追われています」
福祉のみならず、教育、宿泊、飲食といった「ハコ」でサービスを提供するビジネスの売上は、最大収容数×稼働率×単価で売上が決まります。私はA社長から頂いた資料をもとに、各施設の定員数・稼働率・単価を確認します。売上・定員数・稼働率のデータはありましたので、そこから逆算して平均単価を割り出します。
すると、稼働率にはそれほどバラツキはなく高い水準を維持しているものの、単価の方が大きくバラついています。しかも傾向値として見ると、単価の減少傾向が続いています。
ハコモノビジネスの特徴は、ハコ当たりの「客数」上限がある程度見えていることです。特に福祉や教育分野の場合はそれが顕著です。逆の言い方をすれば、売上・経費・営業利益がどうなるかを読みやすい業種とも言えます。そして計算によって、ハコ当たりの営業利益の上限も算出できます。もしその施設ごとの上限が、本社経費を賄うのに十分な水準でなければ、利益水準は低くなります。
「客数上限」があるということは、売上利益を上げていくには必然的に「単価側」をいかに上げていくかを検討しなければ豊かな経営になりにくいのがハコモノサービスの特徴です。しかしながら、この「単価」に対する意識や、その向上に向けた具体的な取り組みが十分に行われている会社は少ない印象です。
その背景には理由があります。利用者数や稼働率は日々の運営の中で比較的「見えやすい」一方で、単価は「見えにくい」構造になっているからです。
特にA社のような福祉事業の場合、単価は保険制度に基づく報酬体系の中で「基本報酬+各種加算」で構成されます。実績に応じた報告を行ったうえで国や自治体から入金される仕組みとなっており、その算定額は人員配置基準や加算要件の充足状況など複数の条件が絡み合って決定されます。そのため、日々の感覚として単価を把握したり改善の余地を検討したりするのが難しい、という構造的な特徴があるのです。
いずれにしても、弊社が提供している「高単価・高粗利の価値創販コンサルティング」は、ハコモノサービスにおいて「売上と利益上限」を大きく引き上げる仕組みになるため、相談しに来られたA社長は、これまでの盲点に気が付かれたというわけです。
コンサルティングを進めて行く中で、A社長には各施設の稼働率・単価・粗利益・人件費・その他経費・営業利益から構成される収益シミュレーションをしてもらいました。その結果、単価の改善が事業所当たり数百万円の利益向上に繋がることが分かったのです。これが実現できれば、A社は高収益企業に化けます。
ハコモノサービスにおいても、単価を高付加価値なものにしていく仕組み作りの手順は変わりません。独自価値を明確に形にし、価値を守りながら伝えていく受注導線を構築することで、明確な他者との識別境界線を形成し、独自市場を形成していくことになります。
しかし福祉事業の場合は少々力の入れどころが異なります。前述の通り、人員配置基準などの加算要件によって単価が変わるという特徴があります。したがってA社長が仰った「人の問題」は確かに間違いではありません。何事も例外や応用はあるということです。
ただし、仕組み作りの進め方については「管理者の育成」からではなく、「方針策定→業務設計→決定サイクル設計→評価設計→育成設計→賃金設計」の順になります。この詳細については【第49号:人時付加価値(1人粗利)を飛躍させる組織化の進め方】をご覧ください。
最悪なのは、減っているキャッシュフローを補うために更なる拠点展開に走ってしまうことです。拠点を増やせば売上は増えますからキャッシュインが増えるような気もしますが、当然ながら投資額や経費といったキャッシュアウトが発生します。
さらに、拠点が増えた場合、稼働率と高粗利をマネジメントできる体制が整っていなければ、拡大すればするほどに1施設当たりの利益は減少していき、本社経費を賄うので精一杯の状態となります。量の発想に頼る危険性はここにあります。
傷の浅いうちにご相談に来られたA社長は非常に聡明な方です。多少の痛みを伴う可能性はあれども、A社長のリーダーシップと仕組み作りへの熱意があれば、V字回復を始めるのもそう遠くありません。
あなたは、事業の高付加価値化と、単価粗利の向上に拘りを持っていますか?