第49号:人時付加価値(1人粗利)を飛躍させる組織化の進め方

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「シライ先生、毎日社員からの問い合わせが多すぎて、余裕がありません」こう仰るのは教育サービス業を手掛けるA社長と幹部の方々です。
深く話を伺ってみると、情報共有アプリ、電話、口頭など、あらゆる伝達手段から、毎日数百件の「相談」「問い合わせ」が社内から入ってきているとのこと。100名近くいる社員からの対応に「追われて」しまい、貴重な幹部の時間が削り取られています。幹部には高度な知識と思考力を要求される業務があるにもかかわらず、それに集中することができません。
これは人時付加価値が低下していく典型的な症状の1つです。理由は極めて明快です。価値の小さな業務や作業に、組織全体が時間を取られている状態だからです。
人時付加価値(1人粗利)を上げていくには、この単語が示している通り、1人が時間当たりに生み出す付加価値を大きくしなければなりません。しかし、
・社長や幹部が、役職に見合った付加価値を出す仕事に集中できない
・現場社員が目先の業務を完結できず、問い合わせやその返答待ちという、価値の小さな作業に時間を使っている
という状態であれば、当然ながら人時付加価値は低下していきます。
弊社が提唱している価値創販経営は、価格の主導権を握れる事業を最小人員数で回すことで、中小規模の会社が、量より質的強さを追求し、大きな儲けを生み出していく経営です。これは大きく(1)高粗利で売れていく事業構造設計(戦略設計)、(2)それを最小人員数で回す仕組み(組織設計)から成ります。
(1)により設計上の1人粗利の上限が決まり、(2)によって実際の1人粗利が決まります。この2つの構造が整ってはじめて人時付加価値が最大化し、その恩恵として会社利益と社員賃金を増やしていくことが可能となります。
A社は②を整えるべきフェーズに来ています。1人が大きな付加価値を生み出せる組織運営の仕組みを整えるフェーズです。このフェーズで多くの会社が躓き、A社が陥っているような問題に直面しています。そしてその理由の80%程度は、組織化の「優先順位を間違えている」ことによります。
多くの社長・幹部は、ここを乗り越えるためのアイデアとして「人材育成・評価・賃金」への着手が必要と考えます。実際に組織内は人が動いていますから、その人達の改革が重要なポイントだと考えています。
人時付加価値を最大化していく組織構造
もちろん人材育成・評価・賃金の仕組みは整備する必要があります。しかしその前に整備しなければならないことがあります。それは「業務設計」と「決定サイクルの構築」です。人時付加価値を高めていく組織作り、即ち最小人員数で1人粗利を最大化する組織作りのプロセスは次のようになります。
①業務設計→②決定サイクル構築→③評価設計→④人材育成設計→⑤賃金設計
この順に構造を整えていくことが大切であり、また、人時付加価値が上がらない理由はこれらの構造のどれかが抜けていたり、修正ポイントがあることを意味します。
①業務設計
人時付加価値を上げていく重要な考え方は、組織を「業務」と「資源」に大きく分けることです。人時付加価値の上限は事業構造によって決まりますが、その事業構造を実際の現場で実現していく組織の要素は「人」ではなく、「業務」であることに着目する必要があります。
人は業務を設計したり遂行したりする「資源の1つ」です。言い換えれば、業務を遂行する資源は「人」に限らず、設備やシステムの場合もあり得るということです。実際に機械やITやAIの発達により、人が従事していた業務をそれらに行わせることで品質と効率を上げていくことはもはや日常茶飯事となっています。
もう少し言えば、人が業務を遂行するとしてもそれは正社員の場合もあればパートアルバイトのこともあり、更に外注という選択肢もあります。申し上げたいことは、事業を現実化する「業務設計」が先にあり、その業務を行う「資源」は後から決まるということです。
自社の独自価値を現実に創造する要素は、サービス業務、販売業務、生産業務といった現場の業務です。業務は色形がありません。「商品」や「設備」や「人」には色形がありますが、業務そのものはそれらのように色形を持つ概念ではありません。
しかし、顧客が価値を受け取れるのは遂行業務による結果です。作る・売る・技術提供する、といった業務プロセスがあるから事業は現実化します。その作る・売る・技術を提供するうえでの「業務のあり方」を規定することが業務設計です。そして設計された業務に対して人・システム・機械などが割り当てられ、設計された業務を動かします。
価格主導権を握れる経営において、業務設計は非常に重要です。なぜなら人によって業務に対する考え方や成果ややり方がバラけていては、自社と他社を区別する識別境界線が曖昧になってしまうからです。識別境界線が曖昧になるということは、自社の尖った特長が失われてしまうことであり、尖りが失われればカテゴリー内における競合との比較に巻き込まれざるを得なくなるからです。
②決定サイクル構築
業務設計に続いて構築しなければならないことが、②決定サイクルの構築です。決定サイクルとは、時間経過の中で業務設計を定着させながら、良いものへと改良していくサイクルになります。
設計された業務は、組織に定着しなければ意味がありません。ルールを決めたのにそれがいつの間にか守られなくなり立ち消えになる組織は、この決定サイクルの仕組みを欠いているのです。言うまでもなく、業務は人時付加価値を上げていくためにルール化されます。それが徹底されなければ各自の人時付加価値に大きなバラツキが生まれることになります。
残念ながらA社には①だけでなく②の仕組みが殆どない状態です。結果的に、業務設計さえあれば現場判断で処理できることが沢山あるにも関わらず、些細なことでも幹部層にお伺いを立てたり確認をしたりして進めて行かなければならない状態になっています。これが組織全体の人時付加価値が上がらない真因です。
業務設計というとガチガチに固めて例外を許さないものという、極端な解釈をされる方が時々いらっしゃいます。しかしビジネスというのは日々変化しているわけであり、その変化に応じてより独自価値が輝くものに設計を変えていくのは当たり前のことです。
その時点での人時付加価値を上げる業務設計を即座に組織に浸透させる。そして絶えずより良い設計を検討し決定する。そして決定された設計を即座に組織に浸透させる・・・この仕組みが決定サイクルです。
③評価設計
①②の仕組みが整ったうえではじめて「③評価設計」に進むことができます。①②がない評価の仕組みは、ほぼ間違いなく機能しません。
評価とは「独自価値を提供するための必要な業務を遂行したり、改良することがどの程度できるか」の判定です。したがって業務設計がない状態での評価とは、明確な評価項目や評価基準がない状態での評価にならざるを得ないのです。するとたいていの場合、協調性、取り組み姿勢、意欲・・・といった「情意評価」に走ることになります。
情意評価の欠点は、それが多分に主観を伴うものであることです。「自分なりにやっている」という意見がまかり通ってしまうのです。
業務設計があるからこそ、独自価値創造に直結する業務の「考え方・やり方」と「基準」がはっきりし、それに基づいた「客観的な」評価が可能となります。業務設計がないのに適正な評価など、やりようがないのです。
④人材育成設計
そして評価の仕組みがあるからこそ、④人材育成設計をすることができます。人材育成とは「独自価値を高め・守り・伝えていくために、必要な思考・スキル・技術を身に付けること」です。
その各人の育成にとって必要な思考・スキル・技術は、「評価」によって明らかになるのです。業務設計を基準とした評価が行われているからこそ、各人の優れた部分と不足部分が明らかになり、不足部分に対して手を打つことが可能になります。
業務設計も評価設計もない状態での人材育成は、どんな力が必要なのかを分かっていない状態での育成にしかなりません。そんな教育にお金も時間も投下する余裕などないはずです。
⑤賃金設計
そして評価の仕組み、人材育成の仕組みがあるからこそ、処遇としての賃金制度が活きてくるのです。賃金は評価によって決められた階層と評点に対する処遇です。評価の仕組みがいい加減な状態で賃金制度だけあっても、全くもって納得度のない、逆に意欲を下げてしまうような結果をもたらすことさえあります。
人時付加価値の引上げは、泥臭い業務設計からはじまる
A社長はこれまで何度か組織の生産性に手を打とうとしてきましたが、それが上手くいかなかった理由を理解されました。そしてこう仰います。「人材育成や評価が重要だと考えてばかりでしたが・・・最も地味で泥臭く、重い腰が上がらない”業務設計と決定サイクル構築”から逃げていては、組織の人時付加価値は上がりませんね」
まさにその通り、泥臭いことなのです。しかしこの泥臭さを乗り越えることで、経営幹部は自分たちにしかできない高付加価値業務に集中できる時間を手に入れることができ、社員は現場での人時付加価値を上げていくことができるようになります。
いつまでも今と同じ、現場業務へ巻き込まれ続ける疲弊を続けるか、それとも今一時の泥臭さに向かい合って、その後の莫大な時間と付加価値への集中を手に入れるか―その判断が問われているのです。
A社は地味で華のない、人時付加価値向上への第一歩を踏み出します。
あなたは、人時付加価値を上げていくための「泥臭い組織作り」を実践していますか?