第37号:高付加価値事業作りの大敵である「未達常習組織」が生まれる原因と対策

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「シライ先生、当社では、目標をまともに気にして仕事をしている社員がおりません」
専門品小売業を営むA社長のご発言です。「各部門には月次目標を設定していますし、毎年度初めには1年間の目標を部門と個人に割り当てしています。しかし、実際に目標を達成してくれるのはほんの一部の社員だけです。ほかの社員は最初から目標達成を諦めているかのような態度で、まるで意識している様子が伺えません」
目標未達成が普通になっていしまっている現状を憂いてのA社長のご発言です。社長1代で年商7億円規模に成長させてきたA社長。かつては、今の古参社員たちが中心となって日々販売やサービス提供に邁進し、地域では一目置かれる存在にまでなりました。
しかし勤務年数30年以上になるベテラン社員と、10年未満の社員で構成される歪な組織構造の中、社歴の短い社員の間では目標がまるで空気のような存在になってしまっています。ベテラン勢が業績の8割を支えている中で、次なる人材の目が出てくる気配がないことに強い危機感を募らせています。
目標が目標として機能していないということは、常習的な未達成が発生している状態であり、これによって会社の人時付加価値にバラツキが生まれ、筋肉質な強い収益構造が作れないという問題が顕在化します。
しかし、この問題にはそれ以上の大きな問題が潜んでいます。それは、「目標を持って思考や行動をする」というビジネスにとっては当たり前の感覚が組織からなくなってしまうことです。目標の未達成が続き、それに対する明確な信賞必罰がないと、人はやがて目標の価値が分からなくなってしまい、単なる号令や記号の1つとしてしか捉えられなくなり、真剣に向き合うべきこととして認識しなくなってしまうのです。
プライベートや趣味に関する目標なら、それが未達であっても全ては自己責任ですし、何か重大な問題に発生するということもすくないでしょう。それに対して、会社が立てている目標は「顧客に対する責任」や「会社存続の条件」がその根底にあったりしますので、極めて重要な存在です。目標を空気のように扱われ、何にも意識しない組織になってしまえば、事業の基盤そのものが弱体化していくことになりかねません。
そこで、目標未達に対して叱責をしたり教育や研修をしたり、時には脅しのような釘差しをするわけですが、実はこれによって未組織から未達グセがなくなるというのは、かなり珍しいケースです。なぜなら、未達常習組織が生まれてしまう原因は、組織メンバーの能力の問題ではないからです。それよりもむしろ、「目標設定そのもの」に大きな問題が潜んでいるのです。
未達常習組織の多くは「目標が成果目標になっていて、行動目標になっていない」という特徴があります。
成果目標とは、様々な行動や思考の結果として得られる目標のことです。一方、行動目標とは望む成果を生み出すために必要な行動毎に設けられる目標を指します。この違いについてはハッキリと認識できるようにしておきましょう。例えば、営業部に課せられる「売上目標」は成果目標になります。それに対して「訪問件数」「提案数」「企画立案数」といった目標は行動目標になります。
成果目標と行動目標は互いに繋がっています。訪問件数があって初めて提案件数を稼ぐことができ、提案件数があるから一定の契約数が生まれます。また提案の中にもいくつかのチェックポイントがあり、そのクリア度に応じて契約単価が変わってきます。これによって成果目標である「売上」が創出されるのです。
行動目標とは読んで字のごとく「行動」することで達成することが可能な目標です。また、計画を練ったり知識を手に入れれば誰もが達成できるようになる指標です。一方の成果目標は、それを目標として掲げても「何をどうやればクリアできるか」が見えにくい指標です。「売上高」「成約件数」「不良率」「工期」「生産コスト」・・・こういった目標ワードは成果目標の代表格です。
こうした成果目標を見て、何をどれだけやらなければならないかを判定でき、それを実行できる人を「ベテラン社員」と言います。成果を出せるベテラン社員とは、成果目標だけ与えれば、やること・やりかた・やる量を自分で判断して実施できる人のことです。
一方、判断業務を担う実力のない社員はこの反対の状態です。成果目標を課せられても、やること・やりかた・やる量を自分で判断できません。ということは「目標を与えられても動くことができない状態になる」のです。動けない目標を与え続けられると、人はその目標を自分事として捉えなくなります。そして未達成でいる状態が「普通の」状態となります。
未達成が普通の状態になるということは、高付加価値事業を目指すものとしては絶対に許容してはならない状態です。理由は単純です。毎月、毎週、毎日の目標を達成しようという気のない集団が、ある日突然会社の掲げる1年後の大目標を達成できることなどあり得ないことだからです。もし達成できたとしたら、それは目標が低いか、事業に対する追い風が吹いていたかのどちらかであり、マグレと同じです。
社長や幹部は、社員の成果目標の未達を責めたり叱責する必要ありません。しかし行動目標の達成に対しては正しく追い込んでいくことが必要です。なぜなら行動目標は、計画を立てて振り返りながら改善していくというサイクルをまわすことで、多くの場合達成することが可能だからです。そして何を行動目標とするのかをハッキリと方針として明示し、これを徹底的にやり抜く環境を整えることが社長と幹部の重要な実務になります。
未達常習組織と化している場合、まずやらなければならないのは目標設定のあり方を変えることです。目標の大小や難易度が問題なのではありません。未達が常習化すること、目標意識を持たず惰性で仕事をまわすことが最大の問題なのです。目標がないのなら目標を与え、成果目標しかないのなら行動目標を設定するのです。その行動目標は、会社の目指す大きな成果目標―売上・粗利・営業利益・賃金水準―に繋がっているものでなければなりません。
A社長は目標設定のあり方を根本から見直し、部門や個人に対する新たな目標設定に取り組んでいます。徐々に、行動目標を達成するための週次計画や日次計画を自ら立てる社員が現れ始めています。目標にコミットさせるには、社員の意識を変えること以上に、目標設定そのものを変えていく視点が重要なのです。
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