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第4号:高収益・高賃金会社が実践している、会議参加者からの発言を増やす方法

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「シライさん、うちは会議をやっても殆ど社員からの発言がありません。何か変えたいと思っていることや、変えて欲しいと思ってることもあるはずなのに、そういったことも発言しない。なんだか、ただ生活の為にやっているような仕事ぶりで、仕事に感動はあるのかな?と感じています。」

 地方で製造販売業を営むA社2代目社長からのご相談です。業歴も長く、地元の業界では名の通った会社の2代目としてバリバリと事業発展を目論んで頑張っています。ところがその頑張りが空転しているような、自分1人だけが先走って全体との温度差を感じているようです。
 2代目社長としても、この会議の場で見られる温度差は、内心気が気ではないでしょう。会議の場というのは組織の社風が丸わかりになる場です。業績は決して悪くなく、きちんと利益も確保しています。永年黒字を継続しているのは先代と2代目社長の奮闘による成果でしょう。一方で、社員の年収水準は地域の同業種・同規模企業と同程度に留まっています。

 私は社長にお伺いします。
 「どんなことを議題として挙げているのか、議事録など見せて頂けますか?」
 社長は、営業部の前回会議の議事録をお持ちになりました。議題にはこう書かれています。
 ・売上アップの対策・・・
 ・セール企画・・・
 ・フェアの開催・・・
 私は気になる事を質問します。「会議の参加者はどなたですか?」
 社長は答えます。「営業社員全員を参加させています」

 会議に誰を参加させ、どんな議題を展開するのかは、組織の付加価値を高めていく上で極めて重要です。なぜなら、会議は必ず「物事の終点であり起点」であるからです。会議は、会議日までの事実を踏まえた上で、会議後の「決定」が生まれる場所です。会議を境として過去がまとめられ、未来が決定されるのです。

 それゆえ、会議で発言がないということは、参加者が決定プロセスに参加できていない状態ということになります。しかし裏を返せば、これは「決定プロセスに対して関与しうる社員は誰か」「議題は適切であるか」という視点の重要性を我々に提示してくれます。

 A社の会議は、参加者に対して議題が「大きすぎる」のです。ベテランも新人もいる中で、上記のような極めて重要な課題を議論しても、それに対してまともな発言を出来る社員はごく少数と考えるべきでしょう。それは、社員の意欲ややる気の問題ではなく、単純にそれを議論できるだけの土台がない、ということが原因です。

 「営業部が売上やセール企画について議論するのは当然でしょう。議題が大きいなんてことはないのでは?」
 社長は少し解せない様子でお話をされます。

 もちろん、営業部ですから販売予算がありますので、売上について取り上げることは極めて当然のことでしょう。しかし、こと「意思決定プロセスとして会議を有効なものにする」のであれば、どの参加者とどんなレベル感の議題を話し合うかは、組織の付加価値向上と活動への参画度合いを決める非常に重要な要素となります。

 「売上をあげるには?」A社に限らず大変多くの会社で毎日のように聞かれる議論ですが、その議題の大きさを認識している社長は極めて少数であると言わざるを得ません。その方法や仕組みを提案し、実施に移せる社員がいるとしたら、即座に役員に引き上げて他社に流出しないようにしなければならない、超優秀な人材です。

 このような「土台に見合わない大きな議題」での議論を何年も要求し続けると、冒頭のような組織になります。
 真面目な社員や勢いのある社員は、はじめのうちは何とか自分なりのアイデアベースで意見を出そうとします。しかし、社員の多くは「全体が見えておらず部分しか見えていない」のです。
 社長は時間軸的にも視野的にも、会社で最も長く高い位置から見渡しています。会社の歴史で培ってきた独自価値や独自のノウハウ、会社の信用や外部イメージというものも熟知しています。また、各部門でどんな問題が起きていて、それが会社の資金繰りや売上にどう影響しているかが、鳥瞰図を眺めるように見ています。
 一方、社員は全体の中の「今」の「特定業務」を担っています。今日・今週の業務をどう遂行するかという視点の中にいます。当然、会社の数字の流れも資金繰りも、何ら知る手立てがありません。
 彼ら社員が出す「売上をあげる策」というのは、自分の業務というフィルターを通した意見です。ここに、社長はズレを感じることになります。そのズレが気になると、今度はアイデアを否定したり、否定までせずとも取り上げようとしない、ということになります。やがて社員は発言をしなくなり、上席が決めたことに従うだけの指示待ち社員となっていきます。
 社員に責はないし、社長が悪いわけでもありません。互いに時間軸と視野が違っていれば、こうなるのは自然の成り行きです。

 自分の仕事ですから、自分で自分の業務を改善していくアイデアを出せます。それを良くしていくための改善提案を会議の場で行うことができます。ある業務を10分短縮させる、訪問件数を1件多くするルート組みの手順を開発する・・・それら改善提案を会議の場でさせ、上席がそれに対するコメントと承認を行うことで、より会議が「建設的な」議論の場となり、闊達で付加価値向上を志向する社風への変わっていくのです。

 A社社長は早速取り組みを開始します。会議体規定を見直し、会議の種類と参加者を規定します。実施前に、私は一言付言します。
 「業務の目的と基本方針だけは、丸投げしないでください。」
 「起点」にあたる会議では各業務の目的と方針を社長から示し、そして次の「終点」にあたる会議で改善提案書を持ってきてもらうようにすることをお伝えします。

 「このやり方であれば、社員が会議を自分事として捉えて積極的な改善提案をしてくれますね」
 A社の雰囲気も徐々に変わり始めました。

著:白井康嗣

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