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第32号:高付加価値社長が知るべき、価格転嫁(値上げ)の本当の意味と進め方

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「シライ先生、また取引先との価格交渉が始まります。ここ数年はいくらか値上げを受け入れてもらえました。ただ、それはコストアップ分を転嫁してもらっているだけで、今まで通りの利益が確保できるだけです。」

 こう話されるのは、金属製品製造を営むA社長です。A社長は続けます。

「ただ、これからもコストは上がり続けるでしょうし、その度に取引先の顔色を伺いながら価格交渉をしていくこの先に、一体何があるのかと感じています。」

 A社長の言葉の1つ1つには重みがあります。”この先に一体何があるのか”というA社長のご発言は、その裏側に強烈な”もっと魅力的で豊かな会社を作りたい”という強い願望がある故です。もし、現状の延長程度の利益・売上・役員報酬・賃金水準を保てればいいと考えているならば、価格転嫁交渉が上手くいっただけで満足しているはずだからです。

 普段は寡黙で大きな目標や願望を口にしないA社長も、コンサルティングの時は別です。A社長は誠実な人柄でありながら、自分・社員・会社を、経済的にも精神的にもリッチにしていきたいという強い情熱をお持ちです。ご指導の際には、心の奥に秘めたその情熱をしっかりとテーブルに上げて頂くことで、目指す先をブラさないように進めていきます。

 昨今、国の価格転嫁支援の流れもあり、昔に比べれば価格交渉がしやすい土台は形成されています。たしかに取引の中には、明らかにアンフェアな取引、例えば支払いサイトの長期化・金型等の無償保管の強制・追加作業料の未払いなどもあります。これらの多くが、まともな契約を交わされることなく行われているという状況自体は、国の施策として変えていくことも必要でしょう。

 しかし、もしあなたもA社長のように”前向きに会社を豊かにしていきたい”という思いを持っているのであれば、しっかりと考えなければならないことがあります。それは、”そもそもなぜ不当とも思える取引構造が生まれてしまうのか?”という問いです。

 様々な理由があるものの、相手からの一方的な要求を飲まざるを得ない状況を一言で表すとすれば、それは「依存」です。相手との取引に万が一のことがあった場合に自社も生き残っていけなくなってしまうのであれば、値下げ要求も支払いサイト変更も受け入れなければならなくなります。「取引先が数社しかない、仕事を紹介してくれる会社や人が少数、顧客が固定的」という状況は、自社の生存をその相手に預けてしまっている状況に陥りやすい言えます。

 下請けいじめの根本にあるのは、大企業と中小企業のパワーバランスの差ですが、世の中一般的にはこれを”大企業のパワー乱用”という捉え方をします。下請け法についても、基本的な思想はそのような考え方に基づいているものと思われます。

 しかし、こと”付加価値の高い豊かで魅力的な事業づくり”に関して言うなら、残念ながらこの考え方で事業経営をしていく延長にその実現はあり得ないでしょう。なぜなら、いくら法規制が進んだところで、構造上の欠陥である「依存状態」は何も解決されないからです。依存状態を解消していくには、あなたの会社が能動的にその解消に向けて動いていくことでのみ、実現可能なのです。いくら法規制にすがったところで、マイナスがゼロになる程度の恩恵しか受けられないのです。

 特定の取引先や紹介者への依存がある限り、自社の主体性を保った価格交渉などあり得ません。たとえ素晴らしい技術力やサービス力があっても、その価値を上乗せした価格を自信をもって提示できないからです。そのため、せいぜい原価高騰分を上乗せした程度の価格に落ち着いてしまい、根本的な会社の収益力を向上させていくことに繋がっていかないのです。依存状態を脱却しない限り、会社の価値を価格に転換して、適正な儲けを得ることは叶わないのです。

 ではどうするか?依存状態を脱却するには、“独自の価値を持ったサービスを具現化し、これを必要とする取引相手を増やし続ける”ということ以外ありません。これは重要なポイントです。「自社の提供価値に大きな魅力を感じる顧客層」「増やし続ける」ことが重要なのです。

 取引先にもその取引先があり、その関係が変わることによって社内方針が変化します。製品の流行り廃りで受注品目が変化します。当然産業ごとの景気変動もあるでしょう。昨日までの顧客が、明日も同じように取引する保証はどこにもありません。

 一方で、これは考え方を変えてみればチャンスでもあるのです。それは、これまで自社と取引していない顧客や産業が、変化によって自社の提供価値を必要とするようになる、ということです。自らの可能性に蓋をせず固定観念を外してみれば、一見マイナスに見える事象もプラスに考えることができます。

 こういった色々な変化が起きるのがビジネスの常なのであれば、「自社の提供価値を見える形にし、中長期にわたって変化する市場に対応し続けながら、一定確率で新たな客層が入ってくる受注活動の仕組み」を社内に構築することの重要性に気が付くはずです。この仕組みを受注導線といいます。

 受注導線構築のポイントは、既存顧客とは毛色の違う顧客層を一定確率で入れていく仕組みを作ることです。既存顧客と同じような顧客(ニーズや規模やビジネスモデルが近い顧客)を増やしても、受注単価を引き上げることはできません。顧客も仕事も変わらず単価だけが変わる、などということは一般的にはあり得ないでしょう。

 一方で、ニーズ・規模・ビジネスモデル・産業の異なる顧客層は、あなたの会社が培ってきたサービス力や技術力に、既存顧客層が認識していない大きな価値を見いだすことがあります。実際に、ある産業で単価1円にも満たない小さなネジが、別の産業では数倍の値段で取引されていたりする例もあります。価値や魅力は、咲く場所によってその大きさが変わるということです。

 依存構造を作り変えていくには、常に新たな顧客層が入り続ける仕組みを持つことにより、取引先を増やすことによるリスクヘッジに加え、相対的な価値が高まる顧客層(高単価商売を実現できる顧客層)を常に入れ続けていくことで実現できるのです。受注導線を構築するということは、価格設定に対しても大きな影響をもち、会社の収益構造を根本的に変えていく意味があるのです。

 価格転嫁は、価格交渉の場でどうにかしようとした時点で負けです。背後にある「一定確率で新たな客層が入る仕組み」によって、依存という構造低欠陥を克服できているかが、真の意味で価格決定権を握れる経営への転換となるのです。これにより”単なる原価高騰分を転嫁する”という「原価転嫁」ではなく、”自社の素晴らしいサービスや技術力といった価値を価格に上乗せする”という「価値転嫁」が可能となるのです。

 会社が長年に渡って培ってきた強みは価値転嫁できます。しかしこれを収益力の改革に繋げていくには、その価値と価格に魅力を感じる取引先を集め続ける仕組みがあって、はじめて「高価格受注」という結果に繋がります。

 あなたは、自らの能動的態度で新たな顧客層を増やし続ける仕組みを作り、価値を売れる経営を目指しますか?それとも現状で満足しますか?

著:白井康嗣

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