第56号:御用聞きスタイルを続けても1人粗利は上がらない理由

・「価格の主導権を持つ王道経営5大戦略セミナー」(東京開催)受付中。
・「1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの、本気で儲かる会社をつくる5大戦略」(東京開催)受付中。
詳しくはセミナー情報をご覧ください。
●最新刊のご案内
最新エッセンスブック「社員の給料を上げながら、会社の儲けを最大化させる法~ゆったり大らか経営で最高益を更新する6大ポイント~」が発売されました!
Amazonでお買い求めいただけます。
「シライ先生、弊社はお客さんのご要望に応えし続けてきました。お客さんに尽くすのが弊社の理念だからです。ただ・・・」
こう切り出されるのは加工業を営むA社長。真摯かつ自信に満ち溢れた社長の言葉には偽りがありません。それは、A社の取引先リストにずらりと並んだ会社の数を見れば分かります。取引先が少なく1社依存している中小加工業が多い中、A社は60社近い取引先と恒常的な取引をしています。A社長は続けます。
「ただ、いつも一生懸命やっている割には、経営が良くなっている実感がしないのです。給料もそれほど上げられないですし、投資に回せるお金も残らない。」
”お客様のご要望にお応えする”-この言葉はビジネスの真理のように語られることがあります。しかし敢えて申し上げれば、この言葉は、その解釈の仕方やビジネスへの活かし方によっては”毒”になることがあります。
何が毒か?それは「要望に応えるというある種の美しい思想の仮面」に、「自社の独自性」が覆われてしまうことです。自社ならではの独自の価値・ウリモノ・ビジネス・・・そういったものがなくなってしまうとどうなるか?独自性を失うという事は、自社の独自市場を確立できないということを意味します。
このコラムでも何度もお伝えしているように、高価格を自ら主導できるビジネスにしていくには、需要と供給のバランスを意図的に崩すことが絶対条件となります。詳しくはこちらのコラムをご覧ください【第44号:1人粗利3千万、年収1千万円事業構築の原理原則】
すなわち、自社を競合との同質カテゴリーの中で語らせず、自社独自のカテゴリーを生み出し、これを広めていくことで独自の市場を形成するのです。
顧客が高いプレミアムを支払っても良いと考えるのは、品質や技術の高さ、納期の短さではありません。ある分野において”貴方の会社しか市場に存在していない”と認知されたときです。その時初めて独自市場が形成され、自社が需要に対する唯一の供給業者となり、価格主導権を握れるようになるのです。
その独自の分野を定めるにあたり、既存の概念にとらわれる必要はありません。世の中になくて構いません。むしろ世の中にあるものであれば、すでに独自ではなく、多数供給業者側に自らをプロットしてしまうことになります。
自ら独自の分野を「作り出す」のです。今ある技術・歴史・思想・ノウハウ・資源を洗い出し、自らの独自分野を生み出すのです。
切削加工、溶接加工、曲げ加工、何でも短納期対応できます・・・御幣を恐れず申し上げるならば、これなら設備と人のいる会社ならどこでも言えます。いえ、質の高い外注先を持っている会社なら、設備も人もなくとも言えてしまいます。
自社を独自たらしめるために、もっと自社の強みを深く掘り下げるのか、逆に抽象度を上げて顧客側の得られる経済価値・感情価値を捉えるのか・・・これを考え抜けるのは経営者以外にいません。当然です。会社の定義を決める最も重要な意思決定だからです。
そして、本当に「要望に応えなければならないこと」は、その自らが定めた独自分野における高度な要求に対して、です。自らに問うべきは、
「その要求は、自社の独自性を一層輝かせるものか?」
「その要求は、自社の独自性をより高い領域まで引き上げてくれる要求か?」です。
答えがイエスなら、どれほど困難な要求であってもそれに応えていき、独自性を高く高く積み上げるのです。
答えがノーなら、敢えて断る必要はないにせよ、それが自社ビジネスの主眼ではないということを意識する必要があります。
真面目にお客様の要求に応えながらやっている会社ほど、様々な要求が舞い込んでくるものです。しかし、「あれできますか?」「この条件でやれますか?」に答え続けた先に、「あなたの会社しかない!」と顧客から尊敬される会社の姿があるかと言えば必ずしもそうではありません。
ではどうしたらいいか?あなたの会社しか提供できない独自価値を形にし、その価値を能動的に世の中に問いかけていくことです。「相手からの要求や、一般市場からの期待に応える」というビジネスの回し方から、「あなたが独自の価値を提案し、独自市場を作っていく」ビジネスの回し方に変えていくということです。
A社長は「本当に我が社にそんなことが出来るのだろうか・・」と期待と不安が入り混じった表情を見せます。そうです、それこそが1人粗利の最大化を目指す社長の姿です。
自らを定義するということは、世の中に自社の存在意義を明示することであり、誇りを感じることです。一方で、独自であることは孤独です。はじめは認められないかもしれないし、その独自領域に合わないお客様が離れていくかもしれません。受注量が減るかもしれません。
しかしその恐怖を乗り越えた会社だけが、自ら価格主導権を握り、自ら付けた価格で顧客と対等な商売をし、豊かでゆとりある高収益高賃金経営が可能となるのです。そしてそれは小さな会社でも、いや、小さな会社だからこそ実行可能な戦略なのです。
あなたは、自社の独自価値を定義し、独自の市場を切り開いていっていますか?