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第46号:プラス価値を生み出そうとしない組織になる理由と対策

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「シライ先生、私が取引先を開拓してきても、社員がそのお客様に対してきちんと対応してくれないのです。それを思うとなかなか取引先開拓に足が向かいません」

 私が書いた書籍をお読みになった、運送業を営むA社長のご発言です。ドライバーが出払ったA社事務所で、A社長は肩を落としています。A社長は続けます。

「先生の本では、受注単価を上げるには新規開拓が必ず必要と書いてあります。私もそう思うのですが、新規先を開拓してきても社員が対応してくれなければ、クレームが発生したり、最悪契約解除ということにもなりかねません」

 これまでは、どちらかというと付加価値の高くない仕事を低単価で受注していたA社。より儲けを生み出し、財務状態も安定させたい勉強熱心なA社長は、付加価値の大きな仕事獲得のチャンスを見出し、積極的に動いています。しかし肝心のドライバーがその仕事をこなせる技量とサービス精神がなく、こなすことができないという問題に当たっています。

 様々な原因があります。社員本人の資質の問題もあれば、教育の不足、評価の仕組みが整っていないなど、挙げれば数多くあるでしょう。私はA社長にお伺いします。「明文化されている経営指針、業務規程、管理帳票を確認させてください」

「こういったもので良いでしょうか?」A社長は運航料金表、就業規則、法令書類をお持ちになります。

 問題の真因はこれでハッキリします。それは「規律」が社内にないことです。

 規律とは「目的と目標を達成するためにコントロールされた思考・行動」を指します。例えば朝起きて顔を洗い・歯を磨き・朝食を取るという行為も、「一日を気持ちよく始める」という目的のために定められた規律の1つです。

「規律」は「習慣」と密接な関りがあります。習慣とは、ある行動が繰り返されている状態のことです。先ほどの朝のルーティンは、殆どの人にとって”規律が習慣化”しており、毎日の実行に移されている状態です。”目的のための守るべき行動(規律)が、自動的に行われている(習慣)状態”になっています。

 ここで一つ気が付いていただきたい重要なポイントがあります。

 習慣には「規律に基づいた良い習慣」と「規律のない惰性で回っている悪い習慣」の2つがあるということです。規律という概念がない組織は、容易に後者の状態に陥いります。理由は明快です。目標達成という土台を持つ「規律」がなければ、慣れたやり方や苦痛の少ないやり方を続けたがるのが人の性だからです。

 残念ながらA社には規律がありません。なぜなら目標も、それを実現していく規律も「明文化」されていないからです。日々の業務遂行をコントロールする「規律」がどこにも明文化されていないのです。

 運航料金表も就業規則も法令書類も、事業運営上必要な情報です。しかしそれらは、社員の行動に規律をもたらす情報でもなければ仕組みでもありません。

 規律がない状態で回っている組織は、個々人が個々人の習慣を作っています。仕事の進め方も顧客との対応も、規律に基づくやり方ではなく、ラクなやり方で回すことが習慣化されています。やり方も異なれば成果も異なります。顧客に与える印象も異なるでしょう。

 高付加価値事業を目指していく上で、組織が規律ある状態になっていることは非常に重要です。

 このコラムでも何度もお伝えしているように、事業を高付加価値化して利幅を上げていくには、独自価値を強く尖らせ、他社との識別境界線を濃くし、他社と比較させない独自市場を形成していく必要があります。そのためには強力な1点への集中、1つの目標に向かって組織の動きを全て揃えていく必要があります。

 もし規律に基づくことなく、社員が自分の習慣で業務を進めているのであれば、独自価値を具現化することができません。”人によってサービス品質が違う、そもそも目指しているサービス自体が異なっている”、などということがあれば、顧客から見れば「あの会社は人によってやっていることが全然違うじゃないか」となるのは目に見えています。

 そして市場における自社の識別境界線が薄まり、ボヤけていき、独自価値が低下し、ひいては価格主導権を握れなくなります。

 このように、規律で回る習慣がない組織は、新しい価値創造に向けた新しい仕事に取り組ませようとしても上手くいきません。仕事を「自分のやり方で進める」ことが習慣化されてしまっており、規律で会社を回すという発想がないからです。

 これを「規律に基づいて仕事を回す組織」ことに転換していくことが必要です。組織を、明確な目標と目的を持った「規律」によって回っていくものに変えていくのです。

 しかし、規律で回る組織を作ることに対しては抵抗が生まれます。社員側にも抵抗が生まれますが、それ以上に経営者自身が規律で回る組織作りに抵抗を示すことがあります。A社長はこの論理説明のあと、次のように仰います。

「サービス精神が大事になってくる仕事をしてもらいたいのに規律で縛ることをしたら、マニュアル人間を生んでしまい、逆効果なのではないでしょうか?」

 鋭い質問です。規律は守るべき事柄ですから「決まり」です。その規律で定められた以外の状況で対応できなくなったらどうなるのか、というのは気になるところです。

 しかしその不安は杞憂です。規律がない頃に比べ、規律がある組織になった方が、比較にならないほど圧倒的に早く、確実性を持って成長します。

 例えば全国優勝を目指すサッカーチームの規律を考えてみます。彼らは早朝にジョギングやトレーニングを毎日行います。朝食はエネルギーになりやすい食事を取ります。午前中は基礎練習をし、昼食はエネルギーとタンパク質のバランスの取れた食事を取ります。そして午後は実践練習を行い、練習後はマッサージをし、夕食はタンパク質中心の食事を取ります。

 暑い日も寒い日も、雨の日も雪の日も、欠かすことなく毎日行動します。それはなぜか?全国優勝するという明確な目標があるからです。

 目標を実現するために、スマホゲームをする代わりに朝からトレーニングします。食べたいものを食べるのではなく、体作りに必要なものを食べます。気分が乗っても乗らなくても、やる気が出ようと出まいとこれらをやり続けます。ルールがそうなっているからそうしている、のではありません。目標を実現するために必要なことだから、そうしているです。

 これが規律です。規律はマニュアル人間を生むのではありません。目指す目標(高付加価値化)に向けて必要な”やること”をやり続ける組織をつくるために必要なことが、規律なのです。

 規律は個人の創造性を排除するものではありません。規律には「目的・目標」という大命題があります。その方向が明確であるからこそ、規律で定められた行動に”正しい”アイデアをプラスしたり、創意工夫が生まれます。

 規律で定められた行動を毎日取り続けるからこそ、自分たちの成長と、顧客や外部の変化を「目的・目標」への達成度合いという尺度で評価することができるようにないります。

 規律のない自由環境が生み出すサービスは、お客様にとってではなく「自分にとって都合のいいサービス・仕事の仕方」しか生みません。なぜなら「目的・目標」が不在だからです。方向付けも規律もない自由は、個人にとって心地良いやり方が続けられるだけで、本当に価値ある創意工夫など生まないのです。

 規律ある組織を作るために何よりも必要なことは、明確な目標・業務遂行における考え方・行動を「明文化」することです。何度も何度も考え、紙に書き出し、これを組織に周知することから始まります。紙に書いて明示するということは、頭の中で考えていること以上に力強い説得力を持ちます。

 想像してみてください。契約事を紙を使わずに行えますか?図面のない状態で自宅を立てる話を進められますか?もしそういう状態になったら、あなたは真っ先に頭の中でこう思うのではないですか?「これはちゃんとした約束なんだろうか?」

 そうです、紙に書き出され、明示され、共有されてはじめて「守る事項」「合意」になるのです。これは弊社が常に主張ししている、「認知できる状態に可視化されていない価値は伝わらない」ことと同じ理屈です。

 規律の源泉は文書化です。文書になり、配布され、はじめて組織の中に規律の種が撒かれるのです。紙に書き出されていることが決定事項です。紙に書き出されていないことは単なる意見です。文書化され、可視化されてはじめて規律を生む組織作りの入口に立つことができます。

「規律」という言葉には、ワクワクする感情も沸かなければビジネスを強くしそうな響きもありません。何とも地味で泥臭く、言葉自体は昔から言い古されてきた、古めかしい言葉です。しかしこういう規律こそ、千里先に見えるような目標に我々を到達させてくれる重要な要素なのです。

 どんなに優れた戦略も、それを実行する過程で方向が定まらなければ机上の空論です。どんなときにも続けていく事をしなければ、戦略の筋骨は強くなりません。独自価値を強く鋭くすることも、市場における自社の識別境界線を太く濃くすることもできません。

 規律という見えない力こそ、組織を縁の下で支えている見えない基礎なのです。

 あなたの組織には「規律」がありますか?「規律無き習慣」で動いていませんか?

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