第34号:高収益・高賃金を両立する組織に共通する、時間価値への意識を高める方法

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「シライ先生、なぜ我が社のパート労務費が高止まりしたのか、その原因が良く分かりましたよ」
製造業を営むA社長のお言葉です。以前は正社員を中心に事業を回していたA社ですが、より業績を柔軟にコントロールできるよう時間労働者を積極的に採用していき、今では正社員よりパート社員の比率が大きくなった会社です。
時間労働者、あるいは外部のフリーランスや専門家を積極的に活用していくのは、高収益高賃金を両立させる経営において重要な取組みです。売上の変動に応じて人件費を変動費化できるメリットをはじめ、都度スペシャリストを時間で雇うことができるほか、コア業務(創造業務・特殊技術・マネジメント)に正社員を集中させることによるスキル高度化を狙えます。
ところが、A社のもとではパート人件費が売上変動に比例しない状態が起きていました。一時的な売上減少期においても、なぜかパート人件費が変動せずに固定していたのです。結果的にそれが利益減少の要因となってしまったとのこと。私はA社の事務所にて社長にいくつかの質問をしながら、業務日報と作業書を確認します。
書類上は仕事をしているように見えます。社長も「社内を見て回っていますが、仕事減少時期においても、これといって手待ちがあるようなわけでもなく、みんな仕事に取り組んでいるように見えます。シフトの組み方も問題なく見えるのですが」と仰います。
この状況で、もしパート賃金を大幅に上げていないとすれば、人件費固定化の原因は総労働時間が固定しているということになります。ではその真因は何でしょうか。その答えは先ほどのA社長のご発言の中にあります。それは「仕事をしているように見えるよう、仕事をしている」ことです。
人は何もしない時間というものを恐れます。特に仕事において何もしていないということは注意の対象になりますから、余計にその傾向が強くなります。そのため、もし目の前の仕事がないにもかかわらず管理監督の目がある場合に、最も多くみられる行動が「必要以上に丁寧に時間を掛けて業務を行う」という行動になります。
A社で起きていたことはまさにこれです。パートは勤務時間が減れば収入に影響しますから、これを減らそうとはしません。仕事が減っている中で管理監督の目がある以上、早く仕事を終わらせて手待ちしていればサボっていると思われかねません。そこで、必要以上に丁寧にゆっくりと仕事をしたり、あるいは頼まれてもいない仕事(周りに良かれという気持ちでやるので余計に注意しにくい)をやり出したりするのです。
これほどの例ではないにせよ、読者の会社にも必ずと言っていいほど、こういうことは起きているはずです。時間という資源に対する意識が欠如している、あるいは時間を引き延ばした方が個人の有利になるような状況が発生していると、人時付加価値が低下していきます。
やっかいなのは、仕事をしている”雰囲気”はあるがために、盲点になってしまうことです。凄く真面目に仕事に取り組んでいるように”みえる”社員でも、本当にその中身や時間配分が付加価値を高めているのかは、案外分からないケースが多いのです。
高収益と高賃金の両立は、人時付加価値の最大化が必要です。人時付加価値とは時間あたりに1人が稼ぎ出した粗利益を指します。もしあなたの会社のザックリとした人時付加価値を計算したければ、次の簡単な計算式で算出できます。
人時付加価値=1か月の粗利益÷社員の1か月総労働時間
これが、社員が1時間当たりに生み出した平均的な価値の大きさです。部門別に算出してみると部門比較ができます。そして、社員の時給と人時付加価値額を比べてみてください。
3倍以上差があれば”優良”です。社員の給料を上げてもなお会社の利益は十分残ります。事業構造は儲かりやすいものになっていますし、業務標準化のレベルも高いでしょう。給与水準を上げて優秀な人物を確保できます。
2.5倍~3倍差なら”普通”です。少しくらいは社員の給料を上げてもいいでしょうが、事業構造か業務標準化レベルのどちらかに問題があります。
それ以下なら、事業構造と業務標準化レベル両方に問題があります。
いつも申し上げている通り、高収益高賃金の両立は事業構造・業務標準化・人材成長により達成されます。これら3つの要素をより良いものへと作り込んでいかないと、時間意識を育てることはできません。時間意識は、時間当たり創出価値の重要性を認識することで生まれるのです。
そのためにも、自社の時間当たり価値の大きさを可視化することが必要です。時間当たり価値を大きくしていけば、利益も賃金も大きくなっていくことを目に見える形で示すことが必要です。各業務の標準的な時間を把握することや、標準時間で生み出すべき成果を可視化することが必要です。
収益性も賃金水準も上がらない会社ほど”自由な発想”とか”臨機応変”という言葉を使いたがります。しかしこれは本当の意味で使われているのではなく、単純に”時間に縛られて仕事をするのは窮屈だ”という思いからきているものだったりします。業務に標準時間を決めたり基準を決めるというのは、ある意味窮屈なのかもしれません。やったことのない会社にとっては、自由が失われるような感覚がするでしょう。
一方で、高収益高賃金を両立する会社は、業務に標準時間や基準を設けて進めていくこと、優先順位を付けること、計画を立てて進めていくということは”当たり前”という感覚であり、窮屈などとは思っていません。なぜなら窮屈か自由かということよりも、彼らは時間を最大限活かすことを重要視しているからです。
会議であろうとマネジメントであろうと教育であろうと、そこには「時間と基準」が設けられています。当然その時間や基準は「求める成果」のために儲けられたものであり、求める成果に近づけるよう、絶えず見直しが図られるものです。時間への意識というのは、その時間価値=時間で生み出す成果に拘る行動と、それを促す価値の可視化によって芽生えるのです。
あなたは、会社の時間価値を最大化しようとしていますか?時間価値を上げていくための仕掛けを仕込んでいますか?