第23号:高収益・高賃金社長が実践する、指示待ち組織から自発組織へ変えていく方法

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「シライ先生、お陰様で、受注導線の設計や営業活動の方も多少回るようになってきました。特にこれまで営業方面は全く弱かったものですから、新しく利幅の良い仕事が入ってくるようになって驚いています。全社に方針発表をしてしばらく経ち、会社の雰囲気は改善されてきたと思いますが、まあまだ今は指示待ちの状態ですね」
伝統工芸品を製造するA社長のご発言です。受注面では数量単価ともに上向き始めているA社長、ご自身のやってきたことに自信を募らせているところですが、一方の組織の指示待ち社風についてはまだ変化が見られていません。
高収益・高賃金を実現していくには、一言で言えば「高い付加価値を最小人員で提供できる会社に作り変えていく」ことになります。当然のことながら、これは社長1人の労力でどうにかできることではありません。社長がトップとして全体の手綱を握りながら、現場業務を受け持つ管理職と社員がその付加価値を高め続けていく社風に変わらなければ叶いません。
A社の生産現場では、仕事量に応じて人員数を調整する必要があります。人員の中には正社員、パート社員、外部フリーランス、それから長期休暇中の社員もいます。人を増やし過ぎると収益性に悪い影響が出るため、様々な工夫をして適正要員数を確保することが課題です。その様々な工夫が現場でなかなか進まないことが、冒頭のA社長のご発言だったわけです。
指示待ち社風の悪影響は、社長の時間をそこに取られてしまうことです。再三申し上げていることですが、組織の中で最強最大の人時生産性を生み出す人は社長です。社長の1時間を現場作業の1時間に充ててしまうと、人時付加価値と役員報酬のバランスが釣り合わなくなります。長期戦略を考える、そのために外部の人に会いに行く、顧客を知りに行く、新しい事業の芽を探しに行く、という時間を取れなくなると、豊かな事業発展にブレーキがかかってしまうことになりかねません。
社長一人が指揮を執り、他の社員が指示待ちをしているように見えれば、社長からすれば「一体君たちは何を考えているんだ!?」と言いたくなるのが実際のところでしょう。それもそのはずです。事業に懸命になり、様々な仕掛けを自ら生み出していく社長からすれば、「そんな人からの指示を待っているだけの生き方をしていて何が楽しいんだ?」と感じるのが偽らざる思いだったりするのではないでしょうか。
しかし、じゃあ本当に社員が指示待ちを望んでいるのか?と言われれば決してそうではありません。言われたことしかやらない(言われたこともできない)と思われていた社員が、ある日突然何かに開眼したように、自ら様々な提案を上げてくる社員に様変わりしていく光景を、私はこの目で何度も見てきたことがあります。そしてA社の中にも、既にそうなりつつある社員が生まれているのです。
組織が指示待ち人間で溢れる社風になってしまう原因は、一言で言えば「組織に思考させていないから」です。指示待ちがはびこっているのは思考せずに仕事をさせている何よりの証拠です。しかし、これは社員に思考力がないという意味ではありません。問題は「正しく思考する環境が組織に整備されていない」ということになります。
この「正しく思考する環境の整備」は、社長が高付加価値事業作りの実施を管理職や社員に任せていく上で、極めて重要な概念となります。理由は明快です。組織が正しい思考をできないと、社長が描く事業方針とはズレた方向に行動してしまうからです。その結果A社のように指示待ちになるケースもあれば、社長の考えとは違う考えのもと仕事を進めて行ってしまう、という形で問題が露呈するケースもあります。考えはしているものの、考え方や方向性が社長の意図とズレている、というケースは大変多く見受けられる問題です。
正しく思考する環境づくりには2つのポイントがあります。
まず1つは、事業経営に関する社長の方針を言語化・見える化することです。そこには事業経営における社長の根本的な考え方、中長期的な会社の成長目標、事業の質的向上における基本方針、それらを落とし込んだ各業務に関する目標と方針が組み込まれます。これは組織全体が共有すべき「考え方の土台」になります。
そして2つ目は、その思考を社員に連鎖連動する仕組みを作ることになります。考え方の土台が経営方針としてまとめられていたとしても、これが業務の中で生かされていなければ、単なる「社長の頭の中を整理した情報の束」にしかなりません。方針を上手にまとめることと同じく、これを組織の思考行動に連鎖連動させることは非常に重要になります。
では思考を連鎖連動させるとはどういうことか?それは「社員に与えたプロジェクトや業務をどのように進めようとしているか、その考え方をチェックする仕組みを持つ」ということになります。経営方針にしたがって、プロジェクトや業務の成果創出に向けた計画や企画を立てさせ、「どんな意図で何をどう進めて行こうとしているのか?」をチェックしていくのです。
そもそも思考するという行為は、ビジネスの文脈で言えば「付加価値を高めていくための将来の行動を決定する」ということになります。当然と言えば当然の話ですが、思考の成果物は未来の行動なのです。ですから「未来をどう行動しようとしているのか?」について社員が正しい考え方の下で設定できているかどうかをチェックすることで、社長の思考が正しく組織に根付いているかどうかを確認することができるのです。
この確認をするための仕組みがあることで、徐々に社長の考え方が社員の中に根付いてくるようになります。社員が作成する実施計画書や企画書といった「思考業務の成果物」を確認しながら、「なぜこう考えたのか?」という問いで社長と社員の思考にズレがないかをチェックしていくのです。そしてズレがあればこれを指摘し、徐々に正しい思考を組織に根付かせていくのです。
そしてこの仕組みが回り出すと、現場業務に関する多くのことを徐々に管理職に任せられるようになります。なぜなら、現場に関する多くの業務を、社長の承認を得た計画に基づいて、作成した管理職が進めて行くことになるからです。この計画は社長の方針に一致した計画であり、同時に「社員自ら作った計画である」ということが作成した社員の自発性に繋がっていくのです。
「実は大変有能な社員がいるのですが、病気をしたことがきっかけで現場業務が困難になっている社員がおります。いきなり全ての管理職とやっていくのは難しいですが、この社員となら取り組んでいけるかもしれません。」A社長は期待を胸にお話しされます。
私は、A社長に進め方の進言をしたうえで、次回までの課題をお渡しします。
A社長の思考連動経営が始まりました。