第25号:高収益・高賃金事業を成立させる高付加価値思考をどう埋め込むか

大好評の「1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの、本気で儲かる会社をつくる5大戦略」(東京開催)受付中。詳しくはセミナー情報をご覧ください。
●最新刊のご案内
最新エッセンスブック「社員の給料を上げながら、会社の儲けを最大化させる法~ゆったり大らか経営で最高益を更新する6大ポイント~」が発売されました!
Amazonでお買い求めいただけます。
「シライ先生、同じ資料を持たせているのに、営業マンによって大きな差が出ます。いま、再来月のイベント集客に力を入れていますが、予約数に大きな違いがあります。」
専門品を販売するA社長のご発言です。A社長は続けます。「今に始まった話ではないですが、やはり営業成績の良い者は配布数も圧倒的に多いし、配布時にイベント参加のメリットを説明していますね。各営業がどれだけ配布しているのか、配布時に説明しているのかをチェックしていますが、やはり集客数が営業成績とも比例します。」
A社にとって、イベントは最終的な成約に至るまでの重要な「ステップ」です。高単価・高付加価値品を販売していくには、顧客と出会ってから最終的な成約までの導線を敷いて、その導線を確実に上がってきてもらう必要があります。そのために、導線上ではいくつかのステップを掛ける必要があります。ステップとは顧客の購買意欲を一段上げる場になります。会社と見込み客が直接出会うことになるイベントの場は、顧客を成約の場まで導いていくための重要なステップとなります。
そのステップを上がってもらうためのイベント集客ですから、ある意味これが高付加価値事業成立の肝になるのは間違いありません。しかし、ここで間違えやすい対応が、いの一番に「配布数を増やす」「営業マンを教育する」対策に走ってしまうことです。
「いや、案内の数を増やして案内の質を高めれば集客数も増えるのだから、配布数を増やして営業マンのロープレをすべきなのでは?」という声が聞こえてきます。もちろん、配布数を増やすことも営業マンを教育することも必要です。しかし、こと高付加価値商品サービスを販売していくという視点においては、その前段階としてしなければならない対策があるのです。
それは「配布資料の内容を見直すこと」になります。
お客様に配布する資料、今回のA社の場合はイベントに来ていただくためのイベント案内リーフレットになります。なぜこの案内リーフレットの見直しが最初に必要なのか?それは、配布資料の見直しという行為を通じて、高付加価値事業運営に必要となる「高付加価値思考」を手に入れることができるからです。
高付加価値思考とは、事業運営における様々な問題解決において、「投入の量」ではなく「投入の質」で解決していく思考を言います。投入量を増やして成果を上げるのと、投入の質を増やして成果を上げるのでは収益力が大きく異なってきます。
前者の場合、投入単位当たりの稼ぎは変わりませんから、全体の成果が高くなったとしても投入コストも同時に増えていきます。一方で後者の場合、投入単位当たりの稼ぎが大きくなるので、全体成果を上げながら投入コストを押さえ、結果的に利益や賃金原資を増やすことに繋がります。
このあたりのことは理屈として理解していたとしても、あるいは理念として標榜していたとしても、それを現場業務を担う社員にどう落とし込めばいいのかに悩む社長も多くおられます。その解決の1つの方向性が、「顧客への提供資料との向き合い方を変えること」になります。
顧客へ提供する資料、今回のA社の場合はイベント案内リーフレットになるわけですが、当然ながらここにはイベントの概要や特長や申込方法などが「文書」と「ビジュアル」で表現されています。そしてこれまた当然のごとく、この案内リーフレットは「イベントに来てくれる人を増やす」ために存在しています。
つまり、高付加価値事業の基本設計の立場から考えれば、「この案内リーフレットが、営業マンによる説明不要で伝わり、ご覧になった人が共感してわんさか来客してくれる」ものであることが最も理想の状態になるということです。要するに、この案内リーフレットに書かれている「文書」と「ビジュアル」が、来てほしい見込み客に刺さる内容としてどれだけ質の高いものになっているか?を追求することこそ、集客という面における最大の課題ということになります。これが質による問題解決思考です。
配布部数を増やすより、配布に対する反応率を増やせれば単位当たり付加価値が大きくなります。営業マンのトークスキルを磨くより、説明不要で誰でも案内できる状態にするほうが営業マンによる成果のバラツキが減り、単位当たり付加価値は大きくなり成果も安定します。理屈としては非常に単純です。
しかし往々にしてこのような発想にならないのは、問題解決の思考の根底が量的発想になってしまっているからです。会議では、配布枚数や訪問件数目標についての議論はあっても、そこに質の議論がありません。自社の独自性について考え、イベントの独自価値について考え、見込み客の強い願望について考え、配布資料用の説明文・セールスレターとして見込み客に刺さる文章を考え抜く、という「知的生産」の時間と習慣がないのです。
すべきことは、配布資料を作る部門と営業部門が協力し合い、どんなメッセージを載せるべきか、お客様の願望は何か、自社の独自性はどう表現すべきか、受注導線の後工程にイベントを連動させていくために何を伝えるべきか、申し込みにあたっての障害は何か、申し込みしやすいカタチになっているか、といった思考・議論・文書化です。
配布資料に向き合うという事は、その文書化を通じて高付加価値思考を養う絶好の機会でもあるのです。リーフレット1枚で、いかにそのイベントの魅力を伝えきれるか?沢山の枚数を配布するという問題解決に走るのではなく、1枚のリーフレットに何を謳えば見込み客は行動を起こしてくれるのか?
この思考の過程を通じて、お客様の強い願望、自社と他社の違いや独自性、最終的な購買に至るまでの導線全体とメッセージについて深く追求でき、結果的に来店率・成約率・成約単価といった質の部分がより強化されていく体質に変わっていくのです。この思考を組織の習慣としたうえで営業マンへの教育を実施することで、質的成果が倍増していくこととなります。
たかが販促資料1つ、されど販促資料1つです。付加価値に拘る組織は、販促物1つに対しても「これ1つでどれだけの成果を生み出せるか?」という事に徹底的な拘りを見せます。他所から借りてきた言葉、巷で溢れている言葉を使うことなく、自分たちの頭で考え、その思考を文書に反映させます。「何となくこれにしている」とか「その言葉やデザインを採用している理由を説明できない」という曖昧模糊な活動が極めて少ないのです。
あらゆる業務に対してこういう拘りを見せる組織を作っていくことが、現場業務で付加価値を作り、社員1人当たりの粗利を持ち上げていく重要なポイントです。
「たしかに、案内リーフレットがその機能をどれだけ果たせるかという視点はなかったです。集客においては営業マンがメインであり、リーフレットはその補佐ツールという思い込みがありましたが、リーフレット1つに対する向き合い方にも組織の思考回路が良く表れますね。うちでも色々な販促物を作ってきましたが、割と雑に扱われることが多く、そこにも組織の思考状態が表れているという事ですね」
あなたは、組織が高付加価値思考を手に入れていくための思考環境を整えていますか?そのための仕組みを構築していますか?