第60号:額縁の経営理念が、組織を変えない理由
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「シライ先生、これが弊社の経営理念です」
メンテナンス業を営むA社長は、そう仰って額に収められた書を私の目の前にお持ちされます。A社長は続けます。
「我が社は問題だらけです。社員には、この経営理念の意味を噛みしめて欲しい。」A社長の並々ならぬ思いを察し、その後も暫くA社の生い立ちから現在までの状況、そして社長の心境も含めて、私は暫くお伺いします。
その後「会議を一度見て欲しい」とA社長からの要望で、私はA社の営業所長会議に同席します。会議は約1時間続きます。会議後に私の二人だけになったA社長は「どうでしたか?」と私に問いかけます。
私が答える前にA社長は「発言が少ない、嚙み合わない、資料を用意していない、理念も行動指針も分かっていない」とご自身の感想を述べられます。
経営理念、社是、行動指針、社訓・・・言葉は色々ありますが、要するにそれらは会社にとっての「軸」となる基本的考え方であり、それがあるべき行動を引き起こしていきます。当然、人の集合体には軸がなければバラバラになってしまいますから、軸を持つことは絶対に必要です。
確かに経営者にとって、経営理念は経営の根幹に位置する大切なものでしょう。
しかし言葉は悪いですが、経営理念というものは、額縁に飾って有難がるような高貴な代物ではありません。そういう「ある種の崇高さ」で経営理念を扱うことが、経営理念が組織を変えない大きな理由なのです。
では経営理念とは何かーそれは「口癖」です。「何も考えなくとも、いつも出てくるコトバ」になっているのが経営理念の正しいポジションです。例えばこういうことです。
「その提案って”顧客第一”になってる?」
「君が報告してくれたお客様の声は、君が今日会った”1人1人のお客様の小さな声に耳を傾けた”内容?」
「今日の品質づくりは、どんなところを”昨日より前進”させるつもり?」
「今日の新規開拓は、”まずやってみる精神”にどれくらい即してた?」
「この成果物全体を振返って、”凡事徹底”したと言えそう?」
このように、組織が普段の会話の中で「フツーに」使われている状態になっていることが、経営理念の浸透している状態です。逆の言い方をすれば、普段組織の会話の中でフツーに使われている言葉こそが、組織が思っている会社の理念なのです。
「その提案で売上取れるの?」であれば、額に入った指針が”顧客第一”でも、実態は”売上第一”です。
「そんな先に新規開拓に行ったって時間の無駄だろう」であれば、額縁の”チャレンジ精神”より、実態は”ミスを許さない”組織です。
では組織の口癖を変えるにはどうすればいいのか?それは社長の口癖を変えることです。社長が顧客や社員と話をしている時の口癖こそが、本当の経営理念です。そして社員は驚くほど忠実に、社長の口癖を真似ます。
社長が社員との日常的な業務会話で「売上売上」と何度も言えば、社員の口癖も「売上」になります。社長が”できない理由”を責めれば、社員も解決策よりできない理由を探します。
逆に社長が、日常会話の中に何度も「経営理念」に謳われた言葉で問いかけ続ければ、社員もそれを日常業務の中で、口癖の如く部下、同僚、後輩に問いかけます。それは、セレモニーや朝礼といった改まった場で使うものという話ではないのです。
何でもないフツーの業務上のやり取り、会議中、打ち合わせ中、部下と上司の報連相中、休憩時間・・・そういった時に組織の中に流れている「口癖」こそが、その会社が真に信じている理念であり、行動パターンなのです。
経営理念、行動指針、経営方針、マニュアル、制度・・・それらは飾るものではなく、常に携行するべきものです。オフィスの1か所に飾ったところで日常には落とし込まれません。口癖のレベルまでフツー化させるには、社員の日常に、それらが可視化されている状態を作らなければなりません。
あなたは、行動指針を額縁に飾ったままにしていませんか?その言葉を、普段の口癖にしていますか?