1. HOME
  2. ブログ
  3. 今週のコラム
  4. 第77号:価格の掛け替え(値上げ)を恐れない会社が日々取り組んでいること

今週のコラム

今週のコラム

第77号:価格の掛け替え(値上げ)を恐れない会社が日々取り組んでいること

最新セミナー情報

「1人粗利2千万~3千万円を超えていく、本気で豊かな会社をつくる5大戦略セミナー」(東京開催)受付中。
 事業の生産性を示す中小企業の1人当たり粗利益額は約1千万円。これを大きく引き上げ、豊かで大らかな経営へと転換していく具体戦略を提示。
 詳しくはセミナー情報をご覧ください。

「シライ先生、今期も在庫が増えてしまいそうです」こう切り出されたのは加工業を営むI社長です。

 I社は金属部品の加工を手掛ける会社です。規模としては売上数億円程度ですが、その技術力は確かなもので、複数の著名メーカーの一次下請けを担っています。製品精度や納期対応力は業界でも評価が高く、受注は安定しています。

 ところが、I社は大きな問題を抱えています。主要取引先であるB社向け部品の在庫問題です。I社はB社向けの部品ストックを大量に抱えており、その金額は年商の半分近くにまで達しています。これは単なる在庫ではなく、資金が倉庫に固定されている状態であり、会社の資金繰りを大きく圧迫する要因になっています。

 この問題の根本には、元請け側であるB社側の生産形態があります。B社はある分野で日本トップシェアを誇る企業ですが、その生産方式は典型的なオーダーメイド型です。顧客から注文が入るたびに仕様が変わり、その都度製品を組み立てる方式を採っています。

 つまり標準仕様による大量生産ではなく、顧客ごとにカスタム仕様を作り込むビジネスモデルです。この方式は顧客にとって魅力的ですが、そのしわ寄せがサプライヤー側に集中します。

 I社としては納期遅れを起こすわけにはいきません。B社の注文がいつ入っても対応できるよう、膨大な種類の部品を常にストックしておく必要があります。もし在庫がなければ、B社の生産ラインが止まり、結果として自社の信用問題にも発展します。

 そのためI社は、受注量とは直接関係のない在庫を常時抱え続けています。売上が増えるほど在庫も増え、資金が倉庫に吸い込まれていく構造になっています。

 I社長もこの問題を理解しており、これまで何度かB社に改善を求めています。しかしその都度、話は曖昧な形で流されてしまいます。元請けとしての力関係もあり、I社の在庫負担は解消されないままです。結果として、仕事量が増えるほど在庫も増え、資金繰りはむしろ苦しくなるという矛盾した状態が続きます。

 理屈だけで言えば、解決策は明快です。B社が製品仕様を規格化し、標準部品によるカタログ型生産に移行すればよいのです。そうすれば生産計画を立てることができ、サプライチェーン全体で余計な在庫を持つ必要がなくなります。

 しかし、この判断は元請け側の戦略に属する問題です。I社が外から提案することはできても、最終的に決めるのはB社です。つまり、I社側から見れば「変えられない条件」である可能性が高いのです。

 そうであるならば、I社が取るべき行動は一つです。それは「価格の掛け替え」です。

 現在の受注価格は、製造原価や工数などの損益構造だけを基準に計算されています。しかしI社は単なる加工だけでなく、在庫という巨大なリスクを背負っています。つまりI社はB社のサプライチェーンの一部として、在庫機能を担っているのです。それは単なる製造ではなく、物流機能や資金負担まで含んだ価値提供です。

 この視点で見れば、I社の役割は単なる部品供給ではありません。B社が日本No1のシェアを維持できる背景には、I社の在庫負担があります。顧客から注文が来た瞬間に部品を供給できるのは、I社が資金を使って在庫を抱えているからです。

 つまりI社は、B社のビジネスモデルを支える重要な機能を担っています。問題は、その価値が価格に反映されていないことです。

 受注価格は「損益構造」だけで決めるものではありません。こういうケースの場合は「資金構造」も含めて決めるべきものです。在庫を抱えるということは、資金を拘束し、リスクを引き受けるということです。そのリスクを価格に反映させるのは当然のことです。価格とは原価や工数の裏返しではなく、「提供している価値の裏返し」なのです。

 もちろん、現実の交渉が必ず成功するとは限りません。どれだけ定量資料を揃えて交渉しても、相手が簡単に受け入れるとは限りません。場合によっては取引縮小の圧力を受ける可能性もあります。法律上は下請けいじめが問題になりますが、実務の現場ではグレーな駆け引きが存在するのも事実です。

 だからこそ、常に社全体のお金と利益のバランスを適正化し続けるための「数字に基づく計画経営」が必要になるのです。

  • 価格をどの水準まで上げれば資金繰りを良くするのか?
  • 仮にB社との関係が悪化した場合、資金繰りはどこまで耐えられるのか?
  • もしそうなった場合、新たな粗利益をどの程度上積みできればお金が回るのか?
  • その追加粗利を既存取引先から上げるための活動は?
  • その追加粗利を新規取引で増やすための活動は?今の1.5倍の粗利で受注できる市場はどこか?
  • B社からの受注が減少したとして、その空き稼働に、粗利1.2倍の新たな仕事を受注して入れたら、増分キャッシュはいくらか?そのチャンスを掴むための活動は?

 こういった未来に向けた数字に基づく前向きな計画経営を日々実践できるようになっていることが、安心とゆとりのある事業運営を可能とします。

 価格の主導権を握れる会社は、例外なくこの計画経営を行っています。価格の主導権を握るためのノウハウを活かせるかどうかは、大前提として、そういう「計画経営」の仕組みが会社に入っているかどうかで決まります。

「価格の掛け替え」は単なる値上げではありません。それは収益構造を作り替え、資金構造をも書き換える最上流の経営判断です。成功すれば1人粗利も資金残高も大きく増えます。しかし同時に顧客を失う可能性もある、極めて強力な決断です。

 だからこそ、価格を制する会社は、常にそのリスクを取れるだけの活動を計画的に実施しているのです。

 あなたはこれからも、今の収益構造のまま仕事量を増やすだけのビジネスを続けますか。それとも、儲けの大きい収益構造を手に入れ、質的に強いビジネスに変えていきますか?

メールマガジン

1人粗利2~3千万への着眼点

毎週火曜配信のコラムの他、各種ご案内をお届け中です。ぜひご登録ください(登録無料、解約随時)。

関連記事

トピックス

無料メールマガジン登録

メールマガジン

1人粗利2~3千万への着眼点

毎週火曜配信のコラムの他、各種ご案内をお届け中です。ぜひご登録ください(登録無料、解約随時)。