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第80号:「何でもご相談ください」が、自ら価格低下を招いている理由

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「シライ先生、ホームページからの問い合わせは、相見積もりか、安く頼みたいか、あとは営業ですね」こう仰るのは製造業を営むN社長です。N社ではホームページを持っていますが、基本的な販路は「紹介」がメインで、純粋な顧客だけでなく、同業同士でお仕事を融通しあうこともあります。

 その現状に、N社長は内心辟易しています。本当はスペシャルでハイグレードな技術と製品で勝負したい。紹介で仕事が入ることは有り難い。しかし紹介ゆえの関係性や産業構造的な事情から、技術力を正当に反映した価格に掛け変えにくい。

 仕事量は増えても、会社として何か報われていない気がする――。そんな思いを抱えながら前に進もうとしているN社長に、弊社は論理的な価格設定の計算方法と判断基準をご指導し、財務上のリスク対策を万全にしたうえで、強気な価格設定を決意した形で運用をスタートさせます。

 しかし期待とは裏腹に、入ってくる問い合わせは相見積もり、「いくらになりますか?」から入る見込み客、営業関係ばかり。価格を上げようとしているのに、安値を求める客が来る。この矛盾の正体はどこにあるのでしょうか。

 N社のホームページには、技術や製品の強みとN社長の思いが書かれています。しかしページの下部にはこうあります。「どんなことでもまずはお問い合わせください」。

 ここに問題の端的な核心があります。高価格帯を目指す。しかし入口は誰にでも開放する。この二つは根本的に矛盾しています。

 入口で何を仕込むかは、売りものの価格が上がれば上がるほど慎重さが求められます。「入口は広くとった方がいい」という発想は、低価格戦では一定の合理性があります。しかしハイグレード・高単価戦においては、この発想が致命的な逆効果をもたらします。「何でもご相談ください」という文言は、自ら価格を下げる仕掛けになりかねません。

 実はこの「まずはお問い合わせください」という設計の背景には、1つの期待が潜んでいます。「まず問い合わせをしてもらい、しっかり話をする場を設ければ、うちのことを分かってもらえる」という期待です。

 やり取りが始まれば分かってもらえる、という気持ちは理解できます。しかしこれは、互いの期待に齟齬がある状態で会話が始まるのと同じです。

 相手は「安く・手軽に」を期待して問い合わせてきている。こちらは「価値を理解してもらえる」と期待して場を設ける。この食い違いは、話し合いの場に入った後では、そう簡単に覆りません。ホームページから期待しない問い合わせが来続けるのも、この構造の延長です。

 重要なのは、具体的な商談に入る前の段階で、相手に自社に関する正しい知識を持ってもらうことです。何がこだわりか、どんな価値を提供しているのか、何を引き受け何を引き受けないのか――

 ファーストタッチの段階で「実際の商談や仕事になった場合がイメージできる」ように設計し、相手への啓蒙が済んだ上で商談の場に入ってきてもらう。これが正しい順序です。

 これに付随して、高価格帯で勝負する際に重要なのは「敷居を設ける」という考え方です。これは不親切にすることではなく、その内側の空間を支配する「家主のルール」を提示する精神的な意味合いです。

 敷居があるからこそ、そこは家主の拘りが彩る特別な場となり、客人側にも家主への敬意が生まれます。高単価ビジネスの理想的な関係性は、この「家主と、その世界観を尊重する客人」という構図から始まります。

 一方、敷居のない状態とは、公共施設でばったり会った初対面の二人のような関係です。「何でも問い合わせください」と門戸を開放することは、自らその状態を作り出すことと同じです。

「何でもお問い合わせください」ではなく「商談日はいつといつが開いております、お選びください」「ご用件について○○と○○からお選びください」という設計の方が敷居効果を生み、商談の質は根本から変わります。

 これは不親切ではありません。実は相手側から見ても、その方がメリットがあったりします。事前に、「会社が提供している価値や思想」が正しく伝わっていれば、問い合わせ1つとっても「問い合わせ内容を相手に考えさせる」よりも「選択肢」を選ぶほうが行動を起こしやすくなります。

「敷居」と「行動促進」という、二つの相反するように思える要素をどう設計していくか?小さいことですが、こういう細部の設計が、じわりと高価格帯の拡販に効いてくるのです。

 相手のご事情を丁寧にお伺いするのは、敷居をまたいだうえで商談の場にいらした後です。敷居をまたいだ相手に対してこそ、自社の専門技術・製品・真心を通じて丁寧にお伺いしながら進めていくべきです。

 敷居を越えた顧客は価値を前提に話をします。そのためにも、事前に価値を伝え、啓蒙し、思考を変えさせる設計が必要です。この順序を間違えると、永遠に安売りです。

 提供価値の具現化・論理的価格設定・事業の構造設計という土台の上に、この「敷居の設計」があって初めて、あなたの技術や商品は本来の価値で売れるようになります。あなたの入口は今、誰を招き入れる設計になっていますか?

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