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今週のコラム

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第90号:「価格」に対する解釈1つで、薄利多忙は厚利安定に変わる

「シライ先生、一体どこまで価格は上がるんでしょうか・・」こう仰るのはサービス業を営むU社長です。

 この前も値上げしたばかりですが、色々な経費も上がっているため、また上げざるを得ない状況です。コスト増に追われるようにそれを売値に転嫁するものの、まるで終わりの見えないイタチごっこを続けているようで、このままどこまで行ってしまうのだろう、という先の見えない不安を吐露されます。

 現状の延長線上で戦う経営者にとって、毎月のように押し寄せるコストアップの波は、精神をすり減らす深刻な恐怖以外の何物でもありません。

 物価が上がれば商売が苦しくなる、たしかに所得が伴って上がらなければそう思うのも無理はありません。顧客だって同じものなら安い方が良いと思うのは当然ですし、売る側としても少しでも安くしたほうが顧客に喜んでもらえる、と思うのも至極当然です。しかし、この「一見正しい常識」こそが、多くの中小企業を薄利多忙の泥沼に引きずり込む大きな罠です。

 弊社には、「モノはいい、技術もいい」しかし「儲からない、安定しない」というお客様が沢山お越しになります。今のご時世ですから、やはり「原価が高くて・・」「人件費も上げないと・・」ということで利益が出にくくなっている。これに加えてコロナ時代の借入の返済真っ只中であることが、資金繰りへの懸念に繋がっていたりします。

 現場の努力だけではどうにもならない構造的な限界に、多くの経営者が一人で頭を抱えているのです。

 ここで最も犯す間違いの1つが、「価格改定はそこそこにして、もっと沢山売ろう」「もっと従業員採用と教育を」と、仕事量やそれを捌く人手量の追求に走ってしまうことです。

 これは収益構造の視点から見れば「薄紙のような利幅をさらに削って超薄紙を必死に積み上げようとしている」行為です。商売量は増えるかもしれません。しかし、その労力に対して「収入と支出の差」が全くと言っていいほど広がらないのです。

 営業、マーケティング、組織作りをやるにしても、根本的な部分である「儲けの型」が間違っている状態でそれらをやるとどうなるか?結果は言うまでもありません。いくら優秀な社員を採り、最先端の集客手法を導入したところで、1回取引するごとに手残りがほとんどない構造のままでは、やはり努力や労力が報われない結果となります。

 ではその根本的な部分とは何か?それが「価格」です。

 価格設定こそ商売の全てを支配していると言っても過言ではありません。理由は極めて明快です。価格はビジネスにおける「経済取引の最小単位」だからです。売上は価格という最小単位に販売量を掛けた総和に過ぎません。仮に価格がゼロ円ならどれだけ販売しても経済価値はゼロです。

 U社長も、弊社にいらっしゃる前は残念ながら「価格」をネガティブなものに捉えています。「上げたら売れなくなる」「できる限り触らないでおきたい」「転嫁するもの」「いざとなったら値引きする」といった感覚で捉えています。

 良いものを安く沢山提供することがお客様満足であり正しい行為、という思い込みがあります。価格を上げていくことに対して、罪悪感すら感じていらっしゃる方もいます。

 しかし繰り返しますが、価格は商売における最小単位、すなわち原点です。自社の提供物1つをいくらで売るか?という極めてプリミティブな世界です。どんな巨大な会社だろうとそれは同じです。

 その商売の原点となる「価格」が高くなっていくことをネガティブに捉えるということ自体が、自らの商売を自らやりにくくしている正体です。原点を否定していては、どれだけ現場が汗を流しても正当な利益として報われることはありません。

 価格上げていくということへの捉え方を変えるのです。それだけで驚くほど事業の厚利安定化が進んでいきます。価格が商売の核であるということは、価格が商売の価値を表し、価格が顧客を決め、価格が収益構造を決めているのです。

 価格を上げるということは、本来、会社の提供物に磨きを掛け、提供価値を大きく引き上げることを約束する、ということです。そして、その価値に相応しい顧客を探索しにいき、「新しい顧客に出会う」ということです。まさにこういった「ビジネスの醍醐味」に繋がる起点こそ「価格」です。

 モノも技術もいいのに儲かりにくい原因の7割は価格設定にあります。価格の付け方、そして価格に対する解釈が間違っています。ウリモノや売り方の問題ではありません、社員の問題でもありません。

 自社の新たな価値、新たな顧客、そして新しい儲けの構造が生まれていくという「大きなチャンス」にワクワクするか?それともチャンスに気付かず負の側面に怯えるか?

 それが事業の厚利安定化に踏い出せるかどうかの分水嶺なのです。御社は、価格という原点に宿る「真の可能性」に、正面から向き合えているでしょうか。

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