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第92号:厚利安定化の絶対基準となる数字指標「1人粗利」の基準値と増加戦略

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「シライ先生、うちの会社、良くなりますかね?」

 こう不安げに仰るのは、加工業を営むI社長です。受注は途切れず、現場は休む間もなく動いています。しかし売上の伸びは厳しく、手元の資金にゆとりは生まれません。人手にも余裕がない。これがI社長の悩みです。

 I社長の会社が良くならない理由は、一つではないかもしれません。しかし、良くならない会社が等しく良くない指標があります。それが「1人粗利」です。

1人粗利とは何か

 1人粗利とは、社員1人当たりが生み出す粗利益のことです。会社にゆとりを持てる1人粗利の最低水準は、1千万円です。

 もしこの数字に届いていないなら、しなければならないことは、何を差し置いても1人粗利を上げることです。つまり粗利を上げること、そして社員数に頼らないこと。I社のような加工業であれば、計算はこうです。

■粗利益=売上-変動費(原材料費+外注費)
■1人粗利=粗利益÷正社員換算数

 なぜなら、1人粗利こそ会社の利益と社員の給料という経済価値の大元であり、原資だからです。1人粗利が小さい状態で人を増やしても、それは将来にリスクの種をまいているだけです。なぜなら、給料は固定的に出ていきますが、粗利は固定的に入ってくるとは限らないからです。

 極めて当たり前なことを申し上げています。しかし現場に居続けると、「事業と数字の構造」よりも「現場で体感している感覚」の方が遥かに重要に感じられてしまうのです。現場にいること自体は大いに結構です。しかし、もし経営者が「現場感覚」での判断に偏ってしまったら、会社には「事業」と「数字」で判断する人は一人もいなくなります。これが危険なのです。

「人がいないから」ではないという真実

 I社長のように、「人がいないと稼働率が上がらない、受注を捌けない」と考える経営者は少なくありません。しかし1人粗利が1千万円に満たないということは、「人の手数に粗利創出を依存せざるをえない」という、そもそもの「事業」と「業務」構造に根本的な問題があることを疑うべきなのです。

 その根本的な問題は、大きく二つに分けられます。

第一に、事業の構造的問題です。価格設定、顧客構成、季節変動対処といった事業そのものの設計問題です。

第二に、業務構造の問題です。仕事の回し方、内外作区分、IT・AI化の遅れといった現場運用の設計問題です。

 多くの会社が、今や完全なる売り手市場となった労働市場で、人の採用に苦戦しています。しかし、今しなければならないのは、そんな競争激しい労働市場でプロレスをすることではありません。

 逆の見方をするのです。御社は、人を取らなくてもまだまだ儲けを大きくできる方策が沢山あるのです。小さな中小企業にとって、人を採用して育成して一人前に育てるというのは、とてもコントロールの難しいことです。それは経営者本人が誰よりも分かっているはずです。

 一方で、事業の構造的欠陥も、業務構造の欠陥も、社員を採用して育てることに比べたら、簡単とは言いませんが、遥かに「コントロール可能度」は高いのです。

 価格の掛け替えも、受注導線の構築も、業務の標準化も簡単ではありません。しかし経営者が決断しさえすれば実行できます。実行できれば市場や現場が反応します。反応が見えます。反応が見えれば、また決断によって仕組みを改良できます。

1人粗利1千万円が変えるもの

 1人粗利が1千万円を超え、1300万円、1500万円と伸びてくれば、社員の給与を大きく引き上げられます。設備投資にもお金を回せます。それでもなお利益は残ります。そのお金で、有利な条件で優秀社員を採用することもできます。

 1人粗利1千万円は、事業の永続安定とゆとりある経営を手に入れるための最低ライン、入り口です。そして1人粗利が1300万、1500万を超えていけば、会社は間違いなく、労働市場や景気に簡単には左右されにくい、厚利安定事業の仕組みを手に入れはじめています。

 これはただ単に業績が良い状態を指しているのではありません。顧客市場の変化、労働市場の変化という不確実な未来に対峙しても、一定の利益を生み出し続けられる土台が入り始めたということです。

 1人粗利を1千万円以上に引き上げるのは、社員の頭数でもなければ、能力でもありません。事業構造と業務構造の問題を修正すれば、どんな会社でも十分に達成可能なのです。

 貴社は、今後も人手不足を理由にして、事業と業務の構造的問題から目を逸らし続けますか?それとも今、その問題に向き合い、厚利安定への入り口に立ちますか?

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