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第51号:組織が「昭和価格での受注体質」から変わらない理由

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「シライ先生、そうしなきゃならないのは薄々分かっていたのですが・・・」こう仰るのは製造業を営むA社長。2代目として会社を引っ張り、新たなアイデアを様々に試しているエネルギッシュな社長です。

 加工事業としてBtoBがメインですが、豊富な人脈もあり、C(生活者)からの修理やオリジナル製品の受注も受けているA社。先代から事業を引き継いだ会社には大きな負債が残っています。これをキレイに返済し、「豊かで儲かる会社・賃金水準も高い組織」を作っていくことがA社長の夢です。

 A社長にとって、何時も頭の中の一定箇所を占めていること、それは「お金」です。色々と試しているものの、それらが望む富を生み出しているかと言えば、まだ途上段階にあります。細かく多様な仕事を集めてはいるものの、約定返済分を賄うだけで精一杯の状態に終わりが見えていません。

 個別面談を受けに来られたA社長に、私は質問します。「受注価格はいつから変わっていないのですか?」。A社長:「それなんです。もしかしたら昭和時代から変わっていないかも。。。」

 利幅・価格に手を付けなければならない・・・ということは感じています。しかしそこに対して踏み込んだ対策をせず、量を確保する対策にばかり走ってしまうのは多くの会社が犯しやすい過ちです。それは「量」を追求する方が「単価」を追求するより「効果が大きいように見える」からです。

 しかし「大きいように見える」ことと「実際に大きい」かは別です。極めてロジカルに「計算」をしていけば、売上高を同じ割合で増やすなら「単価」を上げた方が利益も資金も増えることになります。理由は明快です。数量を増やせば仕入・外注・輸送をはじめとする経費も増えますが、単価を上げても経費増加分は僅かだからです。

 このロジックについては【第43号:1人粗利最大化に向けた、値決め(値上げ)への躊躇を克服する方法】でも説明していますのでお読みください。

 ではなぜ、単価より量を増やす方が、一見効果が大きく見えるか?

 その真因は、社長はじめ組織の中に巣食っている、「価格を上げると顧客や注文量が減る→売上が下がり金も減っていく」という思い込みによる「心理ブロック」です。この心理ブロックを解除しない限り、冒頭でお伝えしたような「資金に対する不安」が頭の中に巣食っている状態から出られなくなり、価格と利幅を一段上げるという決断ができなくなります。

 組織は自社の技術・サービス・商品に対する誇りを忘れてしまい、営業部門は受注を獲得するために「安さ」について話し、そして実際に安い価格で受注してきます。生産部門は、営業部門が受注してきた安い価格の中で、何とかやりくりしなければなりません。しかしそれもすでに限界を迎えています。

 安く受注を増やし稼働は増え、忙しさは取り戻しても、それに対するお金の安心感と豊かさは感じられません。その原因は「受注価格」にあり、A社長もそれを感じています。しかしそこに手を付けるには、それによるプラスとマイナスがあまりに見えていない状況の中で確信を持つことができません。それが「薄々は価格の問題だと感じている」という言葉として発露しています。

 事業をやっていれば、上手くいくときも上手くいかない時もあります。あなたにも、絶好調で何でも思い通りにいく時期もあれば、何をやっても空回りしお金が減っていくという時期もあったはずです。それは、商売をやっていれば程度の差こそあれ誰もが経験することです。

 A社のように、何らかの事情で今現在が「上手く回っていない」状態のとき、経営者が真っ先に心配し、脳の大部分を占めてしまうことが「お金」のことです。だからこそ、世の中には数多の資金調達手段があるのでしょう。

 その様々な資金調達手法について私は是非を述べる立場にありません。しかし押さえておいて頂きたいことは、お金が厳しい時の最大の敵は、資金繰りが厳しいことそのものではなく、「頭の中が常にお金のことでいっぱいになり、明快な意思決定ができなくなる」ということに他ならないということです。

 何かをしようとしても、すぐ次の瞬間に「でもお金が・・」という考えが頭に浮かぶのです。こうなると何も意思決定が起こりません。意思決定が起こらなければ、組織の行動も変わらなければ、顧客との取引が変わることもありません。その漫然たる意思決定が、何となく漠然的に細かな小さな仕事を救い上げる、という結果に繋がってしまうのです。

 特に、価格に手を付けるということは勇気のいる決断です。経営判断の中でも上位に入る難しい意思決定でしょう。これを決断するために重要なことは、頭の中からお金の不安を払しょくし、積極果敢に受注価格の架け替えに挑戦するため、「心理的なストップ」を外すことにあります。

 心理的ストップを外すというと、気合や根性、有難い説法などで自分のマインドを鍛えて・・・というような精神論を想像する方もいるでしょう。しかし断じて申し上げますが、ビジネスにおいて精神論だけで突き進むほど危ないものはありません。「土砂降りの日に傘を取り上げる」という言葉もあるくらい、厳しい時ほど精神論などに誰も耳を貸してくれないことは、多くの社長が理解しているはずです。

 重要なことは、「価格を掛け替える恐怖を外す仕組み」があるかないかです。心理面の克服においても本当に必要なことは精神論ではなく、「仕組みがあるかないか」です。なぜか?理由は単純です。1つは、精神論は長続きしないこと。そしてもう1つは、社員の心理ストップも外さなければならないからです。

 社長だけでなく、組織全体が「価格と粗利で稼ぐ事業への転換」に協力するようにならなければ、1人粗利を最大化する事業はできません。儲からない仕事ばかり安値で取ってくる組織を変えなければなりません。工場の稼働を埋めるため、ノルマを達成するため、という誤った動機に縛られ、それが自分の仕事と考えている考えを変えなければなりません。

 仮に受注量が減ったとしても価値ベースの対価での受注をする方が、全体の利益・資金・そして社員の賃金にとってもプラスが大きくなるということを社員に認識させる「仕組み」が必要なのです。その仕組みは極めてロジカルに計算された仕組みです。

 精神論ではダメです。これまた理由は明快です。精神は極めて属人的な要素であり、そう簡単に他人が変えられるものではないからです。それとは対極的に、ロジックには疑いや異論の余地が殆どありません。これまで見えなかったロジックが仕組みによって可視化されることで、はじめて人は「本当に重要なことは何か」に気が付くのです。

 社長の心理ストップが外れるだけでなく、社員の心理ストップも外さなければ、1人粗利の最大化による高収益高賃金事業を作る入口にすら立てないのです。

 弊社コンサルティングでは、初期の段階で、利幅と1人粗利に拘る事業展開による長期的なお金の傾向値の可視化をして頂きます。そしてA社長はじめ多くの所感が、「利幅に拘る経営がどれだけ低いリスクで豊かな資金をもたらすのかが見え、霧が晴れた」というものです。それは社員にとっても同じです。

 こうしてA社は「仕組み」によって、社長はじめ組織全体が、「価値を高め・守り・売っていく」価値ベースの価格設計による事業作りの入口に立てたのです。これが高付加価値事業構築への変革に繋がるプロセスの第一歩です。入口に立つことさえできれば、あとは価値創販事業構築のノウハウを学び、必要な仕組みを構築していくことに迷わず邁進するのみです。

 A社が長らく昭和価格のまま「儲からない」商売を続けていた真因はこれです。A社に魅力がないわけでも、社長と組織に力がないわけでもありません。ただ、「先がどうなるか見えないな厳しさ」という漫然とした不安状況が、その魅力と能力を富に変換する意思決定を覆い隠していたに過ぎないのです。

 あなたは、あなた自身や組織から、価格に対する恐怖を払しょくするための「ロジックに裏付けられた仕組み」を持っていますか?

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