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第43号:1人粗利最大化に向けた、値決め(値上げ)への躊躇を克服する方法

「シライ先生、もし値上げをして売れなかったらと思うと、なかなか一歩踏み切ることができません。」

 ある健康事業を営む社長のご発言です。自社で開発してきたオリジナルのサービスを展開していこうとされているA社長。大変ユニークなプログラムを開発し、医学的知見も豊富に持ち合わせている点に優れたオリジナリティがあります。

 A社は、今すぐにでもそのプログラムの価格を変えなければならない理由がありました。それは、現在の価格水準ではどれだけ頑張っても利益を残すことができない収益構造になっていたからです。

 これはサービスに限らず、モノづくりや技術提供についても同じことが言えますが、ウリモノを作ったり提供するには「時間」の投下が必要です。サービスであれば、人がサービスを提供する時間経過とともに価値が生み出されます。モノづくりであれば、原材料の投入から機械と人の稼働時間の経過で価値が作られます。

 サービスの提供時間と1日の営業時間が決まっていれば、自ずと売上の上限ラインが設定されます。単純な話、1時間につき1万円の対価が得られる仕事の場合、仮に営業時間が8時間だとすれば1日売上の上限は8万円となります。そのなかで仕事に必要な人件費をはじめとする諸々の経費が発生し、1日当たりの利益が確定します。

 A社の場合、論理的に収益性を計算したところ、どれだけ客数とリピートを増やして稼働率を上げたとしても、利益をしっかり残せる売上水準に達していかない状況になっていたのです。

 その中で取れる戦略は限られています。社長は、サービスの価格を上げて利幅を大きく上げていく方針を取る事としました。そこでA社長の冒頭のご発言です。

 価格改定にはある種の恐怖が付きまといます。もし売れなくなったら、もし既存のお客様が離れたら・・・こういった”人数”や”回数”といった「数量」を失うかもしれないことに、我々は過敏になります。もちろん、それは社長として当然の心理です。

 一方の「単価」については、たとえ少し下げたとしても「数量」を失う痛みに比べれば小さいと感じるのが、大方の感じ方だったりします。そのため、単価を下げてでも数量を取っていく、という発想の方が世の中では主流となっています。

 もちろん、単価を下げて数量を捌くことを「戦略」としてやっているなら問題ありません。実際それで超高収益を叩き出している企業もあります。しかしそれが戦略ではなく、「我が社が主体的に望んでいない圧力」や「世の中の相場感という見えない圧力」のせいで下げるのであれば、高収益になりようがありません。事業構造も収益構造も、薄利多売で利益を出せる構造になっていないからです。

 A社の価値に見合わない低い価格設定も、「安ければたくさん来てくれて儲かるだろう」という一般的イメージからきているものです。A社の場合、25%は価格を上げなければ豊かな経営の入口に立てないことは明確でした。

 それだけの値上げをするには勇気がいります。もちろん、一気に全てを進めていくわけにはいきませんので、部分的にはじめていくことになります。しかしその前にすべきことは、この値上げに対する恐怖(=数量を失うことへの恐怖)の払拭です。

 その方法は、値上げに対する数量減少はどの程度まで許容できるか、を明らかにすることです。

 値上げをすることによって一時的に数量が減るということはあります。しかし数量が減ったとしても、会社に残る経常利益が今の水準より下がらないのであれば財務的には問題ありません。最低でも現状の経常利益を残せる販売数量までの減少であれば、値上げによる損失はない、ということになります。

 現状の粗利×数量 = 値上げ後の粗利×数量

  この計算式で、現状の総粗利額と値上げ後の総粗利額がイコールになる水準まで、値上げ後の数量は下がっても問題ないことになります。元々の粗利水準や販売量によりますが、冷静に計算をしてみると社長が思っている以上に、値上げ(=粗利増加)効果による許容減少数量は大きい結果になります。

 数字で見ることによって、「意外と稼働が減っても問題ないのですね」と気持ちが前向きになったA社長は、価格改定することを決断します。論理的に数量と粗利のバランスが見えてくれば、値上げもそれほど怖いものではなくなる、ということです。

 これでひとまず価格改定に踏み切ることになったA社長。A社長はまず、既存プログラムのパッケージを変えることで価格を20%上げることとします。現状で稼働率が85%を超えてしまっている状況の中、ある程度「既存客をふるいにかける」ことをしないと、新たな価値を新たな価格で受け入れてくれる新たな顧客層を入れることができないからです。

 多少顧客離れを起こして稼働率が下がったとしても問題ないのです。むしろ稼働に空きが出て、そこに新たな価値を持つ新プログラムを投入し、より高単価なサービスで稼働を埋めていけるからです。その新プログラムは「既存とは異なる年齢層が持つ健康上の願望に応える」ことにより、時間単価を上げていく方針となりました。

 1人粗利を最大化するためには、ウリモノの利幅を上げていく努力が絶対的に必要になります。しかしそれは常に「数量」を失う可能性への躊躇と隣り合わせです。この恐怖を克服していくには、「論理的な計算」と「より大きな願望に対する価値創造」の両面から検討を加え、ウリモノと顧客を徐々に入れ替えていくという戦略視点を持つことが極めて重要です。

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