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第11号:高賃金・高収益化社長が実践する「需供バランス」の崩し方

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「シライ先生、前にお話ししていた特許技術のことですけれど。これを活用して販路拡大していきたいと思っています。ところが、いざ取り組もうと思うと何から手を付ければいいのかがさっぱり分かりません。知人の経営者からはHPとSNSをやったらどうかと進められたのですが、私はデジタルには正直強くなくて。」

 ガラス製品加工を手掛けるA社社長のご発言です。A社長は50代ですが、先代が若くして急逝されたあとすぐに社長に就任し、既に社長業は30年近くになります。技術開発には特に熱心で、先般も新しい特許技術を開発されたA社長。その飽くなき探求心には私も大きな感銘を受けるところがあり、どこかロマンを感じさせる生き方にも共感を覚えます。社長は続けます。

「そうかといって既存の取引先に営業に行っても、その価値を分かってもらえるかどうか。。最近は生産拠点の国内回帰が進んでいる、なんてニュースになっていますけれど、そんなことはこの業界で全く感じません。結局、技術の素晴らしさよりも、海外の安い生産拠点にどんどん仕事が流れていくんじゃないかと不安です」

 自分が必死になって掴み取った技術ですから、これを業界に知らしめて高い単価の仕事を増やしていきたい、という思いもひとしおです。そんな自社独自の技術だからこそ、事の本質をよくよく考えて、真の課題を見失わないようにしなければなりません。

 そもそも高単価・高粗利の仕事・商品・サービスは、どのような条件が揃えば実現できるのか?この条件をはっきりさせておかなければ、せっかくの特許も独自技術も経済対価に変わることなく終わってしまいます。素晴らしい技術があるにもかかわらず全く日の目を見ず消えてしまった例は(それが表に出てこないだけで)ゴマンとあります。

 ビジネスの基本にして根本的な価値は経済価値です。技術は経済価値を生む要素ではありますが経済価値そのものではありません。商売において何かを判断する際には、経済原理を念頭に置いておくことは極めて重要になります。価格や販売量というものは経済原理によって大枠が決められてしまうからです。

 ではその重要な経済原理とは何か?それは-需要と供給のバランスで均衡価格は決まる-という、極めて明快にしてあまりに普遍的な需給均衡の原理です。我々は経済価値を生み出す経済団体の運営者である以上、この原理原則を経営の様々な場面で応用していくことを知るべきです。

 改めて説明するまでもありませんが、需要>供給であれば価格は上昇し、需要<供給であれば価格は下落します。つまり、高収益・高賃金経営の原資である大きな利幅を生み出すためには、市場が「需要>供給」の状態になっていることが絶対条件となります。

「それは当然だろう。だから結局は市況によって、売値も販売量も左右されてしまうではないか」という声が聞こえてきます。しかしもしそうであれば、なぜ世の中に高収益・高賃金企業もあればそうでない企業もあるのか、説明がつかないこともまた事実です。現に規模の小さな企業が大企業顔負けの利益率や社員処遇を実現している会社も沢山あります。

 そういう企業がやっていることは何か。高収益・高賃金企業は、環境に働きかけて需要と供給のバランスを意図的に崩しにかかっているのです。需要>供給というアンバランスを自らの努力で作り出そうとしているのです。その具体的な実務が「差別化」です。商売において差別化が絶対に必要となる理由は、需要と供給のアンバランスを作り出し、価値あるものをあるべき価格で販売していくためなのです。

 差別化とは「自社の独自価値を展開して独自の市場を創ること」です。重要なのでもう一度繰り返します。差別化とは、「自社独自価値」を展開して「独自の市場を創ること」です。よく、差別化とは既存市場を細分化して自社の立ち位置を明確にすることだと言われますが、これは半分正しく半分間違っています。なぜなら既に多くの成熟産業で市場は細分化され尽くされており、競合が住み付いているからです。これからの時代は、既存市場で住み分けをするという発想から「自社独自の市場を自ら創り出す」という発想が、差別化の正しい考え方になります。

 提供している技術・商品・サービスが世の中にない独自のものであり、それに魅力を感じる人々が増えることで市場が形成されれば、その市場には競合他社がおらず、需要>供給というアンバランスを作り出せます。きわめて単純明快な理屈です。

 しかし理屈としては単純でも、環境に働きかけて独自の市場を創るというのは大変な努力を要します。自社の独自価値を世の中に対して積極的に打ち出し、理解してもらう努力をしなければ、そこに独自市場を形成することはできません。何をおいてもA社にとって必要なことは、その特許技術を市場にとっての独自価値に変換していくことでした。

 A社長は、この特許技術が誰のどんな課題を解決できるものなのかを得意先を回りながら必死で考えます。そしてようやく見つけたのです。A社長はそれまで、「既存製品のコストを20%削減できる技術」という認識しか持っていなかったのが「従来技術ができなかった〇φ(口径)以下の微細製品にも応用ができ、しかも小ロットでも歩留まりが40%改善する。これによって顧客の極小化商品開発のコストダウンと、トライ&エラーの回数増加、そして開発スピードアップに貢献できる」という独自価値を見出したのです。

「これであればイケる!」という確信をもったA社長。私はA社長にご提言します。

「独自市場を形成していくには、圧倒的に競合他社とA社独自価値が”異なるもの”であることを認知していただく必要があります。社長は”ブランド”の起源をご存じですか?ブランドは”自他を区別するための烙印”からの由来であり、自他を区別する識別記号です。烙印は単なる印ではなく、そこに思想・価値観・約束・独自価値が象徴されています。独自価値を広めて独自市場を形成するには、市場に対して独自価値が”識別される”ようにすることが必要です。」

 独自の市場を形成していくには、自社の独自価値を他所と明確に「区別」することが極めて重要です。区別せず「あ~、要するにあれ(一般的な)と近い感じね」と認知された瞬間、「一般的な供給業者」にプロットされることになります。つまり需要に対して数多くの供給側の1業者にまわされ、需要<供給の市場内に放り込まれてしまうのです。

 せっかく苦心して開発した技術が、その独自価値を識別可能なカタチにできないばかりに、いとも簡単に「その他大勢の供給業者」に回されてしまう・・これほどやるせないことはありません。特許技術でなくとも、世の中の中小企業には歴史の中で培ってきた技能・ノウハウ・資産・・そういった独自性の源となる素晴らしい要素が沢山あるにも関わらず、価格勝負にならざるを得ない状況に陥っている、そして低収益性と低賃金に甘んじなければならない・・・ここがまさに、高賃金・高収益事業づくりの出発点なのです。

 A社長が続きます。「なるほど、”発明の名称”では技術の事を言っているだけで、相手には何のことだかさっぱり分からない、どんな価値があるのかが分からない・・・そうすると”普通の業者”と一緒にされてしまう、ということですね。ホームページやSNSのことを考えていましたが、もっと根本的な部分を整えないと、何をやっても元の木阿弥になりそうです」

 収益性は需要と供給のバランスによって決まります。そして、これは販売だけでなく「採用・人材確保」においても全く同じことが成り立ちます。そのロジックがどういうことかは、是非あなた自身で考えてみてください。

 私は尊敬するA社長にエールを送ります。「社長はじめ、社員の皆で生み出した技術を絶対に安売りしてはいけません。あと一息です。これからのA社繫栄の”土台”となる価値創造販売の仕組み作りに、持てるエネルギーを注いでください」

 A社長の挑戦は続きます。

著:白井康嗣

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