第38号:事業の高付加価値化を狙うための自社商品サービスが売れない理由

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「シライ先生、自社商品が、仕入れ品に埋もれてしまっている気がするんです」
こう切り出されたのは高級品雑貨を取り扱うA社長です。かつては自社商品を持たず、いわゆる高級雑貨の小売店という形でご商売をされていました。しかしメーカーの度重なる政策変更から取引条件に陰りが見え始めたころ、意を決して自社商品開発に挑戦。
ところが、自社商品を開発したものの販売は思ったほど順調ではありません。売上構成比は仕入れ商品にくらべ1/5程度の水準に留まっています。利益率こそ良いものの、もっと事業の柱として成長させたい思いを募らせています。
「自社商品、自社サービスを作り、これを売って大きな利益を得たい」「自社の技術やサービスを高く売って儲けたい」・・・弊社にはそういったお客様からのご相談も寄せられます。その理由は「自社商品サービス」や「独自の技術」を提供していくことは、付加価値の高い商売への転換を可能にする有効な手段だからです。
しかし、自社商品サービス、あるいは自社独自の技術や設計といったものをお客様に提供していくということは、仕入れ商品の販売や受注生産タイプの商売とは大きく異なることがあります。それは「製品やサービスのブランドを、自らの手で築き上げなければならない」ことにあります。
たとえば世の中に広く普及している製品やサービスを見てみれば、そういったメーカーは当然のごとくブランド作りにも大きなお金と労力をかけていること分かります。誰もが知っている製品サービス、はたまた知る人ぞ知る隠れた熱烈なファンを持つ製品サービスは、単にモノやサービスの品質が優れているだけではありません。広告、パブリシティ、直営店運営、イベントなどを当然のごとく行い、顧客との接点確保からファンづくりまでをきちんと「設計」しているのです。
ここから導き出される重要な示唆は、小売店の仕入れ代金の中にはメーカーが生み出したブランドへの利用料が含まれているという事です。そのブランド力が強ければ強いほど(言い方を変えれば小売業が売りやすければ売りやすいものほど)卸率は高くなり、小売業の単位当たり儲けは小さくなります。
つまり、自社商品・自社サービスとは「自社が価値の源泉となる」形態であり、それを市場に届けるには、ブランド構築を自社で担う必要があるのです。これは、小売りの店頭やECに並べて露出を増やせばいいというレベルの話ではありません。すべきことは、自社商品サービスを市場において唯一無二の存在たらしめる、という戦略の実行です。
ここで多くの経営者が間違えてしまう落とし穴があります。それは自社商品を売っていくために、既に認知度と集客力がある自社の既存の売り場・チャネルに、他の商品と同じように並べてしまうことです。これは、ブランド作りを「露出を増やす」「販売を増やす」ことと履き違えることから生じるものです。
沢山の商品サービスが並んでいる場に、自社独自の製品を並べる行為は、他の商品サービスの類似物であるということを図らずも自ら言ってしまっているのと同じなのです。そして顧客は価値を(自社の想定とは違い)誤って認知し、隣に並ぶものとの価格比較を始めるのです。
先ほど申し上げた通り、ブランドをつくるとは、製品やサービスをただ売るのではなく、「あの人たちにとって、それしかない」と感じさせる存在に育てることを意味します。ある願望を持った顧客層にとってなくてはならない、替えが効かない存在に仕立て上げることです。そうであればこそ、高い価値を認めてもらい、高い対価を支払っていただけるようになり、本当の意味での自社商品開発の利益的な恩恵を長期に渡って享受できるようになるのです。
価格が決定するメカニズムはただ一つです。それは需要と供給のバランスです。自社商品サービスが市場において唯一無二の存在になるという事は、需要者に対する供給業者が自社のみになるということを意味します。もちろんこれは、自社がそう言っているのでは意味がなく、顧客の認知がそうであるということが前提です。強く欲しい願う人がいて、それを提供できるのが自社だけであれば、受注価格に高いプレミアムを乗せる正当性が生まれるのです。
独自商品サービスは、その受注導線の設計において独自性を保たなければなりません。その独自価値を守りながら市場に伝えていかなければ、せっかくの独自製品の価値を想定通りに伝えることはできません。そして独自商品サービスは、たとえ中間流通業者や紹介者を利用するにしても、自らが最終エンドユーザーに販売しなければなりません。
理由は単純です。他所にない独自商品サービスだからです。それを開発した自社以外に、その価値を本当の意味で理解して売ってくれる会社はないのです。
独自製品サービスを用いる商売というのはある意味孤独であり、完全な自己責任の世界です。一見簡単にスピーディに普及できそうな経路や場所を使わず、価値を育て、守り、伝えていく努力が必要になります。これをやり切れる先に、大きな儲けを生みだす独自事業への飛躍的成長が待っているのです。
私はA社長に、根本的な受注導線再構築の課題とノウハウをご提示します。既に自社商品を持っているA社長にとって、本当の意味での自社独自事業化の道が始まりました。
御社の「独自の商品・サービス」、本当に“唯一無二の存在”として伝えられていますか?