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第98号:現預金水準こそ数字構造が生み出す産物。そこにビジネス導線はつながっているか?

「シライ先生、こんなに変わってしまうのですか?!」こう驚かれた表情で思わず声を発したのは、設計業を営むF社長です。

 F社長が驚かれたこと、それは儲けの「構造」を変えることで、資金繰りや現預金水準が想像以上に良くなることを確信したことです。儲けの構造とは、単なる「売上」や「経費」の話ではありません。

 自動車がエンジン・シャーシ・サスペンション・タイヤ……といった「各パーツ」の「組み合わせ(構造)」で初めて自動車として機能するように、儲けの数字も「パーツ」と「組み合わせ」で決定されます。

 薄利多忙に苦しむ社長の多くは、残念ながら数字を構造として捉えていません。売上、経費、利益といった単品指標をバラバラの点として考えています。

 これの何が問題かというと、「事業活動の現場までも、単品バラバラの思いつきで動かしてしまう傾向にある」ということです。

 全体の設計図がないまま、目の前のパーツだけをいじくり回している状態では、いつまで経っても会社にお金が残る仕組みは完成しません。

 現預金水準とは、数字構造設計の最終的な成果です。売上があるからお金が残るわけでもなく、経費を抑えたからお金が残るわけでもありません。

 経営数字がどんなパーツと組み合わせで出来ており、どのパーツをどう変えると最終成果がどう変わるか?を設計できていなければ、得たい現預金水準を意図して獲得できることはありません。

 それはちょうど、建築のパーツと組み合わせを知らなければ、まともに住める家を設計できないのと同じです。

 弊社は厚利安定事業作りをご支援し、価値に見合った価格への積極的な掛け替え、つまり高価格化を推進しています。しかし多くの経営者は、ウリモノの価格を上げていくことに消極的です。

 理由は単純で、売れる量が減るリスクを過剰に心配するからです。

 しかし数字を構造で捉えていれば、「価格」も「量」も、数字構造を構成する数あるパーツの1つとして、それぞれが独自の役割を果たしていることが冷静に理解できるようになります。

 F社長の驚きの声は、F社長が初めて経営数字を「構造」として捉えることができたことで、これまで見逃していた「単価」をはじめとする他のパーツが、いかに現預金水準へ強烈なインパクトを与えるのかを認識したことから来ています。

 部分の数字に振り回されていた視点が、全体を俯瞰する視点へと切り替わった瞬間です。このシフトこそが、経営の景色をガラリと変える一歩となります。

 F社長のご発言には続きがあります。「ということは、ビジネスも、数字要素それぞれを変えていくように進めていく必要がありますね?」――さすがです、その通りです。

 数字を構造で捉えるようになると、日々の事業活動や営業の現場もまた、構造として手を打てるようになります。

 量が減ることを必要以上に恐れるということは、逆に言えば「量」だけでビジネスを動かそうとしている証左です。

 量だけに頼るから、安易な値引きをしたり、セールに走ったり、薄利と分かっていながら特定顧客との関係を引きずったり、大して儲からないコンペ案件に手を出してしまうのです。

 営業活動においても同様に、本来は自社の価値を売りたいはずなのに、やっていることは「数を稼ぐこと」に終始してしまう。これこそが単品バラバラ思考の弊害です。

 重要なことは、数字を構造として捉え、数字構造と事業構造を連結連動させることです。

 量は数字構造の一部に過ぎないと分かれば、いかにそれ以外の「単価」や「粗利率」という重要パーツに手をつけてこなかったか、時間をかけてこなかったかに気が付くはずです。

 数字構造を意思決定の武器にできれば、量以外の要素こそが、手元に残る現預金水準に対して「とんでもなく」大きな影響力を持っているという真実に直面できます。

 それは、難解な決算書が読めるとか、高度な財務分析ができるといったこととは、全く別次元の能力であり仕組みです。

 実際、弊社のクライアントでも、「未だに決算書はよく分からないし、財務分析なんてやったことない」という方は大勢います。

 しかし、「儲けや資金水準に繋がる未来の数字構造の設計」はしっかり理解できます。それは建築士が「既に建っている建物の時価評価はできなくても、誰も見たことのない美しい図面は描ける」のと同じです。

 数字を構造として捉えられるようになれば、事業も構造で捉えられるようになります。価格の主導権を握り、高粗利・厚利安定化していくことも、一部の特別な会社だけの話ではなく、どんな会社でも自らの手で実現可能な戦略なのです。

 あなたは、数字を構造として捉え、それを自社の事業構造としっかりと連動させていますか?そのための再現性ある仕組みを、今日の経営の中で構築しているでしょうか。

著:白井康嗣

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・第35号:利幅の大きい会社が決算書より重視する数字 https://polyphonia-consulting.com/numbers-that-matter/
・第43号:1人粗利最大化に向けた、値決め(値上げ)への躊躇を克服する方法 https://polyphonia-consulting.com/overcoming-pricing-hesitation/
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白井康嗣

この記事の執筆者:白井康嗣

株式会社ポリフォニアコンサルティング代表。200社以上の中小企業を厚利安定型ビジネスへ導いてきた経営コンサルタント。著書に『中小企業のためのワンダーランド型ビジネスで儲ける法』。金融機関でのセミナー登壇実績多数。詳しいプロフィールはこちら

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