第83号:薄利多忙型から高利安定型へ切り替わる変化点
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「シライ先生、こんなに商売が楽になるとは思っていなかったです。」製造販売業を営むN社長のご発言です。どれだけ仕事を回しても焼け石に水、もっともっと、と仕事量を増やし自らを奮い立たせてきたN社長が、それまでの常識的な判断を覆し、思考が厚利安定型に変わった瞬間です。
言うまでもなく、売価の引き上げは粗利益を劇的に増大させます。原材料費のボラティリティが激しく、従来の原価低減努力だけでは吸収しきれない現代において、経営者が「いつでも価格にテコ入れできる状態」を維持できているかどうかは、中小企業の死活問題です。
コストを削る努力は尊いものですが、それだけで会社を守れる時代は終わりました。自社の生存権を確保するためには、価格という名の最強のレバレッジを使いこなす覚悟が不可欠です。
厚利安定型のビジネスにおいて、価格を上げるほどに利益と資金が増えていく現象は、決して奇跡ではありません。むしろ、当たり前に起こる現実です。
高価格化によって、顧客はより協力的になり、不思議と販売量までもが増大していく・・・そんな例を弊社は数多く目にしています。
一方で、価格を上げることへの「罪悪感」と「恐怖」を抱える経営者は非常に多くいます。お客様を裏切ることになるのではないか、顧客が離れるのではないか、現場が反対するのではないか――。こう感じること自体は自由です。
しかし考えるべきは、罪悪感や恐怖があろうとなかろうと、原価も最低賃金も上がり続けるという現実です。
その荒波の中で、自社の存続のために価格を改定せざるを得なくなったとき、多くの経営者が安易に口にするのが「価格転嫁」という言葉です。しかし、この言葉の裏に潜む「依存体質」こそが、薄利多忙から抜け出せない真の原因です。
「価格転嫁」とは、言葉を選ばずに言えば「コスト増加の責任を買い手に押し付ける行為」です。
「自分たちはこの価格にしないとやっていけません、それは物価や最賃が上がっているからです。私たちも努力していますが、我々の力ではどうにもならない事由につき、価格を上げさせてください。」これが価格転嫁の意味です。一見正当に見えて、その実、極めて他責的な発想です。
価格転嫁の繰り返しは、いずれ必ず限界を迎えます。罪悪感を抱きながら他責的な値上げを続けることは、良心ある経営者にとって精神的な重荷となりますし、転嫁を押し付けられる顧客側も「世の中の流れだから」といつまでも納得してくれるはずがありません。その先に待つのは、スケールメリットを発揮できる体力のある会社だけが生き残るという厳しい構図です。
この構造は業種や業態を問いません。BtoBであろうがBtoCであろうが、顧客は価値と引き換えに対価を支払います。その本質は変わりません。その中で選べる戦略は二つです。原価と効率を極限まで高めて価格を維持するか、価格を上げるかです。
どちらにも正解はありませんが、選ばなければ淘汰されます。そして、もし原価維持に限界を感じているなら、価格を上げていくしかありません。
重要なのは「価格転嫁」という発想を捨て、「高価格化」という思考に切り替えることです。高価格化とは、提供価値を高めてその対価として価格を高くすることです。他責思考の価格転嫁とは対極の、顧客により高い独自の満足を提供しようという自責思考です。
会社が積み上げてきた創意工夫や独特の価値観が、売価にどれだけ反映されているか――ここに向き合うことから始まります。価格は据え置かれるものという常識を外すと、価格を変えることは罪悪感ではなく、自助努力が生む価値を正当に対価へ反映することだと捉えられるようになります。
しかし当然ながら、それを認めるかどうかは顧客にかかっています。どんなに自社が素晴らしいと思って対価を設定しても、顧客が注文しないと言えばそれまでです。本当に永続的な利益をもたらす高価格化は、ただ自社の努力を価格に反映すればいいという単純な話ではありません。
技術やサービスの価値を高め続け、顧客にそれを納得してもらえる仕掛けを作り、絶えず新たな価格を認める顧客が入り続ける――そういった「いつでも価格にテコ入れ可能な用意周到な仕組み」が水面下で回っていることが必要です。
その仕組みを持つためには、物事を先回りして強い構造を作る「先回り経営の習慣」が組織に根付いていなければなりません。将来の大きな成果のために、困難を伴う新しい業務設計に毎日時間を割く、先手対応型の組織に変えていくことが求められます。その日の仕事をこなすだけの組織に、高価格化を支える仕組みは育ちません。
御社には、将来の大きな成果作りのために、先回りして物事を仕込み再設計することに時間を使う習慣がありますか?それとも、今後も「価格転嫁」という綱渡りを繰り返しますか?