第84号:デジタル技術の変革を、ビジネスの厚利安定化に向けてどう取り込むべきか?
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「シライ先生、最近取引先向けの文章をAIで作らせていて、凄く楽になりました。」こう仰るのは卸売業を営むB社長です。
AIを利用すること自体は極めて重要です。歴史を振り返れば、スマートフォンやインターネット、さらに遡ればテレビやクルマといった革新に触れたか否かで、企業の命運は大きく分かれてきました。変化に触れないという選択は、実質的には衰退を選んでいるのと同義です。AIも例外ではなく、「使うかどうか」の段階は既に終わっています。
AIの技術的な仕組みに精通する必要はありません。スマホの内部構造を知らずとも使いこなせるのと同じです。問題は「どう使うか」です。そしてここで区分しておきたいことは、「事業作り」と「業務改善」です。この二つは似ているようで、まったく異なる次元の話です。
事業作りと業務改善の決定的な違いは、そこに「顧客が存在するか否か」です。事業作りとは、顧客に対する新たな提供価値を創造し、その対価として顧客を創出していく行為を指します。対して業務改善は、事業を回すための社内リソースの動かし方を整えることです。この区別が曖昧なままでは、AI活用は小手先に終わります。
実際、多くの企業はAIを業務改善に使おうとします。書類作成の自動化、メール文面の生成、業務の見える化。確かに生産性は上がるでしょう。しかし、それで経営が変わるかといえば、答えはNOです。効率化だけでは利益構造は変わらないからです。
経営者が本気で考えるべきはそこではありません。考えるべきは「自社の1人粗利・時間粗利をどう引き上げるか?」、この一点です。AIはそのための手段に過ぎません。ここから目を逸らし、単なる作業効率の話に終始している限り、AI導入の効果は限定的なものにとどまります。
粗利とは、自社が顧客に提供している価値そのものです。1人粗利を高めるとは、少人数でより大きな価値を生み出すことです。時間粗利を高めるとは、同じ時間でより高い価値を提供することです。この構造を作り込むことこそが、厚利安定型ビジネスの本質であり、経営者の仕事です。
かつてインターネットは、人々の「時間と空間の壁」を突き崩し、デジタルコンテンツという新たな価値を巨大な市場へと変貌させました。クルマは、馬車時代の移動概念を過去のものとし、物流と移動の速度を飛躍させることで「移動運搬産業」という莫大な価値を生み出しました。
AIの真価は、過去の技術進化がもたらした効率化や価値創造を、前例のないスピードで「ブースト(加速・増幅)」できる点にあります。これまで、人的リソースや能力、コストの壁に阻まれ、「やりたくても手が出せなかった」構想が、AIというブースターを得ることで一気に実装可能になります。
問いの質も変わります。「5人でやっていた仕事を4人で回せないか」ではなく、「2人で回すためにどう設計するか」に変わるのです。「粗利を3%上げる」ではなく、「新たな価値を付加して10%上げる」に変わる。この発想転換がなければ、AIを入れても経営は変わりません。
AIが自社を加速させるブースターであるならば、燃料となるのは「自社ならではの拘りと独自性」です。他社の真似事ではなく、何が自社にしかできない価値なのか。それをAIでいかに増幅し、具体的なサービスとして結実させるのか。そして、その磨き上げられた価値にいくらの価格を付けるのか。実装に向けて、組織の時間をいかに投資させるか。ここに真正面から向き合うことです。
その意思決定を行うためには、経営者自身がAIを使うことが不可欠です。そして、組織全体にその思想を浸透させる必要があります。そのためには、社長をはじめとする全社員の考え方が、「厚利安定型の1人粗利駆動」へと転換されていることが大前提です。
全員が「いかにして提供価値と粗利を増幅させるか」という習慣を持たない限り、AIという強力な武器を渡しても、宝の持ち腐れに終わってしまいます。
目先の実働をあくせくこなすだけの「労働集約型」の習慣に浸っているうちは、新しい技術を経営に組み込む余裕など生まれません。未来の豊かさを手にするには、将来の大きな成果のために、今の時間の一部を「仕込み」に充てる習慣を獲得しなければなりません。 計画的に時間を確保し、意図的に試行錯誤を重ねる。この差が、数年後の企業格差を決定づけます。
貴社は、この歴史的な成長のブーストに対して、単なる効率化の道具としてではなく、事業そのものを進化させるための準備と仕込みをしていますか?