第108号:AIで厚利安定を実現する会社と、AIで削られる会社の違い

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「シライ先生、AIって使った方がいいんですかね?」こう仰るのは、生活関連事業を営むI社長です。
大雑把なご質問でしたので背景を確認すると、「そもそもAIで何がどこまでできるのかがイメージつかない」とのこと。
「ビジネスにAIを使っていこう」。こうした掛け声は、いまや毎日のように至る所で見かけます。I社長も、AIが大事らしいということは、重々承知しておられるのです。
事業戦略の壁打ちや調べものにAIを使っている社長は、多いと思います。社員が業務の中でAIに調べものをさせたり、文章を作らせたりすることも、ある程度は当たり前になってきました。
それでもなお、「大事なんだろうけど、何かピンとこない」。I社長のように感じておられる中小オーナー社長は、決して少なくないはずです。
その理由は明快です。社長、つまり事業オーナーに必要なAIの使い方が、情報としてどこからも入ってこないからです。
勤怠管理が楽になる。メールの文章作成が楽になる。管理業務が楽になる。たしかに、いずれも大切なことでしょう。しかし、それが「事業の業績や安定度」にどう役立つのかが、社長の頭の中で繋がらないのです。
社長にとっての優先順位は、そこではないはずです。安定的なキャッシュフローを確保する。受注を安定させる。高単価でも売れるサービスを作る。言われずとも動く組織を作る。社長が本当に向き合っているのは、こちらの課題です。
ところが、こうした課題に対してAIが何をしてくれるのか、となると、急に、世間で騒がれているほどの価値を生むとは思えなくなるのです。
要するに、AIは社員の業務上の足しにはなっても、社長の武器になるイメージが湧かない、ということです。いくら壁打ちをして戦略を練ったとしても、いざその戦略を実行させようとすると、AIが何をするのか?という話になってしまいます。
AIの現在地、ということで言えば、いまのAIは、デジタル上で動く作業であれば、そのほぼ全てを「自社専用にカスタマイズされたシステム」として動かせるところまで来ています。厳密に言えば語弊のある言い方ですが、我々中小企業の社長がこれからAIとどう付き合っていくか、という文脈においては、こう捉えて問題ありません。
いつ、何が、いくつ売れたか。その在庫はどうなっているか。売上と粗利はいくらか。誰が、どんな経路で買ったのか。こうした情報を取得し、入力するといった作業を、人の手を介さずAIが自動で処理する仕組みは、それほど難しくなく作れます。データさえあれば生産計画も半自動で生成できます。
しかも、既存のITパッケージのように、自社に合わない仕組みに業務を合わせる必要がありません。自社の業務フローに沿って、オリジナルの仕組みを組み上げることができるのです。
これは、個々に事情の異なる中小企業にとって、極めて重要なことです。弊社は常々、独自性こそが価格主導権の根拠であり、その独自性は、独自の業務や技術の在り方から生まれると申し上げています。
これまではパッケージを入れれば、業務をそれに合わせざるを得ませんでした。しかしAIによる自社オリジナルのシステムであれば、システムの側を、自社特有の業務フローに合わせることができます。これが、このコラムを書いている時点でのAIの現在地です。
しかし、です。
それはあくまで「現場の効率が良くなる」という話であって、これだけの自動化をAIが担ったとしても、なお「社長の課題」からは遠いのです。
その状態のまま、AI活用を「組織の課題」に据えたとしても、「いつまで経ってもAI活用が進まない」というのが関の山でしょう。IT革命から20年以上が経った今でさえ、多くの会社で「社長の課題解決としてのIT活用」が十分に進んでいないことを考えれば、そうなる可能性は極めて高いのです。
経理や社内業務が多少効率的になったからといって、「事業の付加価値」が上がるわけではありません。「社長の意思決定の精度」が変わるわけでもありません。
その間に、AIを「事業そのもの=社長業の補佐」に組み込んでいく会社は、着実に先へ進んでいきます。ハッキリ申し上げれば、社長の立場から事業を豊かにしていくためのAI活用でなければ、組織をAI化していくことはできず、単なる業務改善だけでなく「事業づくり」にAIを活かす会社に、多くの面で差をつけられていくことになるのです。
ではどうすればよいか。答えは明快です。社長がAIを「社長業のため、事業発展のための”仕組み作り”」のために使うことです。社長がしたくても、時間的・物理的にできなかった「実務」を担わせていくのです。
- いつでも価格に手を付けられる、価格主導権を握る仕組み作りに使う
- 高粗利で売れる先を開拓し続ける仕組みを作るために使う
- 社長が外部に向けて発信したい情報を、AIが社長の頭脳を搭載したブレーンとして生成し、発信する
- 現預金水準に直結する社内の数字をリアルタイムで確認し、意思決定の精度を上げていく仕組み作りに使う
- 社長が知りたい内部の情報を、社長に代わってAIが収集し、分析まで済ませておく
- 社長が社員に期待する行動を、社長に代わってAIが適正に管理する
こうした「社長にしか務まらないこと」をAIに担わせられるのは、社長しかいません。社員や業務の一部にAIを使わせても、こういう「事業の付加価値と意思決定の質を上げていく仕組み」が作られることはないのです。
ここに挙げた実務は、我々のような小さな規模の会社では、社長への負荷が大きすぎて、うまくやれていないのが実際のところでした。社長に代わってそれを実行してくれる存在が、リソースとしていないのです。やらなければならないと分かっていても、手足が足りずにできなかったのです。
大きな会社の社長には、経営企画室があり、広報があり、人事部があります。社長の頭の中にあるものを、社長に代わって形にする部隊です。中小企業の社長には、それがありませんでした。
社長が事業でAIを使うということは、まさにこの空白を埋めることです。社長でなければできないこと、社長が必要とする情報を、人を雇って人にやらせる代わりに、AIを雇ってAIにやらせる、ということなのです。
AIを事業成長に活かすには、組織でAI活用を進めていくことよりも先にすべきことがあります。真っ先にすべきことは、「社長にとって必要な仕事」をAIにサポートさせ、自動化していくことです。社長自らが、「自分の業を強くする」という目的をもってAIに触れ、使いこなすことです。
そしてそれこそが、厚利安定型のビジネスを構築していくAI活用の、基本的な考え方です。なぜなら、事業の独自価値と価格、そして粗利を決められるのは、社長しかいないからです。
あなたは、AI活用を社員の業務効率化に任せたままにしていませんか。それとも、社長にしか担えない仕事を支える武器として、AIを自ら雇い入れているでしょうか。
著:白井康嗣
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